第13期全国人民代表大会(全人代)の真っただ中でこの原稿を書いている。
大会の様子を伝える新聞紙面には「習一強」の文字が躍る。それを読んださまざまなメディアからの取材を受けていると、何やら「中国が北朝鮮みたいな国になっている」かのような受け止め方がされているのが理解できた。
確かに、習近平政権になってからの中国では、言論空間は顕著に狭隘になり、政治的には時代を逆行しているといえなくもない。
ただ、だからといって誰もが口を閉ざしおびえて暮らしているかといえば、そんなことはないのである。言論の引き締めを強める習近平指導部の選択は、むしろ具体的な危機感に裏打ちされているといって間違いない。
政治の不作為を訴え ネコをかんだネズミ
そのことを象徴する事件が起きたのは、今年2月14日の深夜のことである。
山東省の企業・皇明グループの経営者である黄鳴氏が突如、地元の徳州市の党委員会書記・陳勇氏について「不作為である」とネット上で実名告発したのだ。
告発した黄氏は、そもそも「中国の太陽光発電の父」とまでいわれた功労者である。全国的な知名度もあったことから、このニュースには中国全土から多大な関心が集まった。
ただ、有名人とはいえ企業の経営者が、自身が所属する地方の政治家、それも権力の集中する書記レベルを告発するというのは、極めて勇気のいることである。捨て身の攻撃といっても過言ではない興味深い事例だ。
本来、地元書記と企業経営者の力の差は、ネコ対ネズミほど違う。そのネズミが、ネコをかむネズミに変身してしまったのだから、よほど切実な理由があったと考えるのが自然だ。
その理由とはいったい何か。
告発文の中の表現を借りれば「懶政(らんせい)」であるという。要するにすべきことをしない政治の“不作為”ということだ。
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