「風邪を引いたり、発熱したりしているだけで、職務放棄だ。懲戒処分の対象にする。これはたかだかお役所の罰則といったところだが、そんなことより、俺たちがこの国に生まれてきた目的、今生きている理由に対する冒涜だ。真剣に自分の身体を管理しろ」
特殊部隊時代の私は、機会があるたびに、選抜試験に合格して特殊戦教育(2年間)を受けている学生に体調管理の話をした。私がそこまで強く言ったのは、体調管理の重要性を認識していたからというだけではなく、自分が非常に健康だからという側面もある。
私は、乳幼児の頃は知らないが、便秘になんて一度もなったことがないし、下痢も数回しかない。発熱したこともほとんどなく、インフルエンザにかかったこともなければ、アレルギーも、持病もない。肩こり、腰痛、関節痛とも無縁だ。
だから不調を訴える学生にこんな対応をした。
「偏頭痛がひどいんです」
「だから?」
「訓練を冷静にできる自信がありません」
「頭痛で?」
「はい」
確かに、彼の表情は冴えなかったし、苦しそうではあった。
「今、出撃命令が出たら、頭痛を理由におまえは行かないのか?」
「……」
「出撃も無理ならば仕方ない。訓練はしなくていい。ただし、この部隊を去れ。頭痛で出撃をやめるやつと一緒に生きてはいけない」
と突き放すように言った。
18年前の叱責を謝罪
だが先日、他人の痛みを理解することの大切さを、今さらながら思い知った。生まれて初めて頭痛になったからだ。こんなに痛いものなのかと仰天し、偏頭痛を私に訴えたあの彼を思い出し、電話をして18年前のことを詫びた。電話を切ってから、自分はふがいないと思った。
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