20世紀のテクノロジー・ガリバーといえば米IBMだ。そのIBMで長く、特に秀でたIT技術者として活躍した榊原彰氏が、2016年から日本マイクロソフトの最高技術責任者(CTO)を務めている。榊原氏がマイクロソフトを選んだ理由とは。
マイクロソフトにはずっと前から誘いを受けてきたが、断り続けていた。だがニュースなどでサティア・ナデラCEOの改革を知るにつれ、「楽しそう、面白そう」という思いが抑えきれなくなった。IBMでルイス・ガースナー氏(1993〜02年にCEO)が断行した改革と、同じインパクトの変化が起こっている「におい」を感じたのだ。
ガースナー氏は、サーバー事業の売り上げが急縮小した局面で、RJRナビスコからやってきて、IBMのビジネスと企業文化を劇的に変えた。僕ら社員も日々すごく興奮して、高揚していた。その当時の記憶が、ナデラ氏によって呼び覚まされた。
マイクロソフトでは技術者の採用にもかかわっているが、優れた人材が多数応募してくる。そして彼らになぜこの会社を選ぶのかと聞くとやはり、「なんだかよくわからないが面白そうだから」と言う。そして、「昔だったら絶対選ばないけれど」とも言うんだ。その言葉の意味はすごくよくわかる。なぜなら僕自身、マイクロソフトは悪の帝国だと思っていたから。
マイクロソフトは「暗黒面」の企業だった
IBM時代、僕は全社員45万人のうち500人ぐらいしかいない重要な技術職に、史上最年少で就任した。だからたとえて言うなら、テクノロジーの世界のジェダイ(映画『スター・ウォーズ』に出てくる正義の守護者)という気分。そして当時のマイクロソフトは、ダークサイド(暗黒面)の企業(笑)。ものすごく排他的で、1社で何でも独占しようという存在だったから。実際にはそういう意図はなかったのかもしれないが、それだけ強大な企業だった。
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