マイクロソフトリサーチ(MSR)は米国、英国、中国、インドの7都市に設置された研究機関。ハイテク企業としてのマイクロソフトの心臓部であり、創業者ビル・ゲイツ氏の時代から一貫して巨額の投資がなされてきた。日本の電機企業も同様の研究機関を持っていたが、その多くが業績低迷期に廃止・大幅縮小されている。マイクロソフトリサーチ・アジア(中国・北京)のシャオウェン・ホン所長に、MSRの最近の重点テーマと、長期的に研究を続けることの効果を聞いた。
僕がマイクロソフトに入ってから23年。近年の変化は、何に投資するのか・しないのかという戦略的な選択が非常に明確になったことだ。端的な例はスマートフォン。一時は自社でスマホ事業を展開したが、サティア・ナデラCEOが躊躇せず撤退を決断した。一方でAI(人工知能)や量子コンピュータのような、コンピュータ・サイエンスとソフトウエアの未来にかかわる研究開発にはより積極的になった。
AIの冬の時代に研究開発に乗り出した
MSRが設立されたのは1991年。当時はオフィスシリーズもまだなく、マイクロソフトはちっぽけな企業だった。その当時にゲイツ氏は「人間の話が理解できる未来のコンピュータを研究する」と決断し、MSRを設立した。つまり今でいうAIの研究に着手した。だが当時、世界のAI研究はいわゆる冬の時代の真っただ中。社内外ともに順風とはいえない環境の中、長期的な視点で次世代技術の研究開発に着手したわけだ。
AIは近年、ディープラーニング(深層学習)の研究成果により飛躍的に発展したが、その基盤を成すのはニューラルネットワークという技術。この技術はわれわれだけでなく、世界的に過去数十年かけて研究されてきた。この長期的な成果なしに、ディープラーニングは誕生しなかった。このように、技術の発展というのは本来的に長期的な活動が不可欠だ。
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