宮崎県の小さな自治体から講演の依頼が来た。地図と地誌を調べた。話の地下水脈にするため、その自治体のCI(特性)を探るのだ。
位置は熊本県との県境に近い。以前、熊本県の秘境に行って、悲しい民謡のルーツを教えられたことがあった。秘境というと、平家の落人が隠れ住んだ、というエピソードが付きまとうが、今度の地域はそうではない。
南北朝時代に、肥後(熊本県)の現菊池市から逃れてきた南朝の忠臣、菊池一族が、この地域を元気づけ活性化するのに大活躍したという。落人が逆に地域の活性剤になったというのだ。
この事実の発見で話のモチーフは決まる。自治体からの依頼テーマは「住民を元気にする話」だからだ。この種のテーマの話をするとき、必ず思い起こす映画がある。『ショコラ』だ。ジュリエット・ビノシュとジョニー・デップが主演。暴風雪とともに、マント姿のジュリエットが幼い娘を連れてフランスの古い町にやってくる。彼女はシングルマザーだ。
住む人のいなかった荒れ家を掃除して住みつく。そこでチョコレート(ショコラ)作りを始める。保守的で排他的な住民たち。村長はその代表だ。住民はジュリエットに魔女のようなムードを感じ取り寄りつかない。ジュリエットは気にせずチョコレート作りにいそしむ。彼女にとってチョコレートだけが生きていく柱であり、同時にこの町を変える武器なのだ。
私は改革は"三つの壁への挑戦"だと思っている。モノの壁、仕組みの壁、心の壁を壊すことだ。特に先入観や固定観念といった、心の壁を崩すのは難しい。相手を悪人視してその非をとがめたり、非難したりする。それに対抗して正義ヅラするのは禁物だ。太宰治のいう"微笑もて正義をなせ"が大事だ。でないと相手は余計かたくなになる。改革の成否はこの心の壁を破壊できるかできないかが左右するので、特に努力する必要がある。
この記事は有料会員限定です
残り 554文字
