有料会員登録 東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資 #経済を見る眼

英国のテロと共謀罪 発言や学問の自由に定職しないのか

3分で読める 有料会員限定
  • 苅谷 剛彦 上智大学特任教授・英オックスフォード大学名誉教授
【今週の眼】苅谷剛彦 英オックスフォード大学教授
かりや・たけひこ●1955年生まれ。米ノースウェスタン大学大学院博士課程修了、博士(社会学)。東京大学大学院教育学研究科助教授、同教授を経て2008年から現職。著書に『階層化日本と教育危機』『増補 教育の世紀:大衆教育社会の源流』『教育と平等』など。(撮影:尾形文繁)

5月22日に英国マンチェスターのコンサート会場で自爆テロが起き、多数の死傷者を出した。子どもや若者が多く含まれていた。無辜(むこ)の民を無差別に殺害することが目的の、許しがたい事件であった。

偶然なのだが、その同じ週に大学当局から「テロリスト育成防止策」について当局が再検討中なので意見があれば申し出るようにとのメールが届いた。テロリスト育成防止法は、2015年に制定されたテロ防止法を受けて制定された、幼児教育から大学までの教育機関に、子どもや学生がテロリストとして育たないようにする策を講じることを求めた法律である。それぞれの教育機関が規則を作って育成防止策を実施し、オックスフォード大学も独自のルールを作っている。ただし、事が重大なために制定以後毎年見直しすることとしていた。その時がこの時期に巡ってきたのである。

育成防止法の冒頭には、高等教育機関向けのただし書きがある。育成防止法に従って作成される大学の規則やその実施においては、「学者、学生、招待講師の諸権利を守ること、それらを保障する1998年人権法ならびに2010年平等法の規定に従うこと」が第一に掲げられている。今回の見直しでも、最初に強調され確認されたのはこの原則である。

ここでいう諸権利のうち、発言の自由、学問の自由の保障が第一に言及されることはいうまでもない。さらに、育成防止策は大学の構成員やゲストを「スパイすること」ではない点が強調されている。テロの攻撃に実際に遭っている英国にあっても、人権の保障、何よりも大学としての発言の自由や学問の自由の保障という大原則が守られなければならないことが何度も強調されている。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数