所得税改革をめぐる議論が活発になっている。きっかけは配偶者控除の見直しだ。配偶者控除は妻(配偶者)の年収が103万円までであれば、夫(納税者)に対して38万円の所得控除を認める制度である。103万円を超えたところからは配偶者特別控除の適用となり、控除額は段階的に減っていく。
この103万円が「壁」となって女性の就労を阻害しているという批判がある。正確には配偶者特別控除という経過措置があるため103万円前後で家計の手取りに逆転現象が生じることはなく、その意味で税制上の壁はない。ただし、家族手当を支給している企業の7割が配偶者の収入制限を103万円に設定し、配偶者控除がベンチマークとなって壁を作り出してきた。
また、配偶者控除が適用される専業主婦世帯を税制上の標準世帯とするモデルも古くなってきた。現在では勤労世帯の6割は共働き世帯で、わが国の家族観のあり方自体が変わらなければならない。加えて、配偶者控除を含め現行の所得控除は限界税率の高い高所得者に有利な仕組みになっている。限界税率が最低税率の5%であれば配偶者控除による減税額は1万9000円(=38万円×5%)にすぎないが、同税率が40%ならば15万2000円が減税される。総じて所得控除は所得税の累進性(再分配機能)を減じてきた。
この配偶者控除をめぐっては、これを廃止して浮いた財源を子育て支援に充てるべきだとか、同控除を夫婦控除に改編して共働き世帯にも適用すべきといった議論がある。当面は現行の配偶者控除の収入制限を150万円まで緩和するにとどめるべきといった意見もある。しかし、所得税改革は配偶者控除にとどまるものではない。いま改革に求められているのは、女性を含め就労意欲はあっても税制などによって就労の誘因が損なわれている人々の就労促進であり、所得再分配機能の回復である。再分配で特に配慮すべきは「結婚し子どもを産み育てようとする世帯」であり、「将来の成長の担い手である若い世代に光を当てる」ものでなくてはならない。さらに、税収中立を前提に再分配の重点化と併せて既存の所得控除を見直すことで(バラまきにならないよう)財政規律を確保することも必須である。
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