7月29日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2015年度の運用状況を発表した。株価下落の直撃で膨らんだ運用損失は5.3兆円。安倍晋三政権の意向で、14年10月に運用資産の株式比率を24%から50%に倍増させた経緯があり、批判の声が高まった。
ただ、多くのメディア報道では、過去15年間の累積収益が45兆円に上り、今回のような短期の損失は年金給付に大きな影響を与えないことが冷静に伝えられた。
それはそのとおりだが、実は、株式以上に厄介な問題を持つ運用資産がある。国内債券(主に国債)だ。
14年の資産構成変更で、国内債券の比率は、60%から35%へ縮小した。それは、アベノミクスにより名目賃金上昇率が拡大する、との想定に沿ったものだった。GPIFの長期運用利回り目標は、名目賃金上昇率に1.7%を上乗せしたもの。これまでのように賃金上昇のない状況が続けば1.7%の運用利回りで十分だが、名目賃金上昇率が2%に上昇するなら3.7%の運用利回りが必要になる。
こうなると、国債の利息収入(14年時点の10年国債利回りは0.5%程度)主体では、運用目標の達成が難しくなると判断されたのだ。
ところが、15年度の名目賃金上昇率の拡大は、わずか0.5%。野党などは国債比率を縮小する必要はなかったと指摘する。しかし、事はそう単純でない。今年1月末、日本銀行がマイナス金利政策導入を決め、国債が想定外のマイナス利回りに突入してしまったからだ。
GPIFは「長期投資家として国債の満期保有に徹する」(森新一郎投資戦略部次長)。足元で取得しているようなマイナス利回りの国債は、満期まで保有すれば最終的に損失を計上することになる。GPIFの髙橋則広理事長も会見で「国債で利息収入を得るのが非常に難しい局面に入った」と認める。
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