旅行業を超えた「交流文化事業」で
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酒蔵スタンプラリーで
北海道の観光振興に貢献

田中酒造
代表取締役社長
田中一良

JTBグループの交流文化事業では、地域を一つのまちという点だけではなく、もっと広がりのある面としてとらえている。その好例が北海道各地にある酒蔵を巡るスタンプラリー「パ酒ポート」だ。田中酒造の社長で、北海道酒造組合の副会長を務める田中一良さんは、かねて道産酒の消費低迷に頭を悩ませてきた。その解決策について、以前から面識のあったJTB北海道法人営業部の田村千裕さんに投げかけてみたのがきっかけだ。

JTB北海道
法人営業部
田村千裕

「沖縄には泡盛、九州には焼酎で地元料理を楽しむことが定着している。でも、北海道には日本酒、ワイン、ウイスキー、ビールとおいしいお酒がそろっているのに、地元を代表するお酒のイメージが薄い。何とかできないだろうか」と、そのとき田村さんは強く思ったそうだ。共に悩んだ末、たどり着いたのが北海道の酒蔵巡り。カテゴリー別の酒を「道産酒」というくくりにして、道内を周遊するフックにしたらどうか。そんな“三本の矢”的発想で、2012年に二十数社の酒造メーカーが参加する「パ酒ポート」が始まった。

道産酒の消費低迷に悩んでいた北海道酒造組合の課題に対し、道内の酒蔵を巡るスタンプラリーを企画したJTBグループ。特典やプレゼントなどを盛り込んだ仕掛けが、多くの人々を惹きつけ人気を強固なものとしている

さまざまな特典やプレゼント応募が用意されたスタンプラリーという仕掛けは、これまでになかった人の流れをつくり出した。スタンプ帳の発行部数は初年度版が5000部、2年目の13年版は8000部。道内に散在する酒造メーカーすべてのスタンプを集めた人は約300人に達し、着実に人気を集めている。田中さんは「パ酒ポートというネーミングやコンパクトに持ち歩けるスタンプラリー帳など、全体の完成度の高さはJTBグループのノウハウがあってこそ。北海道酒造組合だけでやっていたら、企画自体が堅苦しくて、特典もこれほど充実させられなかっただろう」と評価する。

北海道と言えば大自然やグルメなど観光資源に恵まれているものの、主な観光名所を訪れておいしいものを食べればもう十分という旅行客も少なくない。できれば広い北海道を何度でも訪れて、さまざまな魅力を味わって楽しんでほしいというのが地元の願い。その好例と言えるのが「パ酒ポート」だ。現在、「英語版パ酒ポート」も発行し、外国人観光客にも楽しんでもらおうというプランも進行中。特に日本酒の酒蔵は日本の文化、歴史、雰囲気を味わえる格好の場所であり、日本らしさに憧れる外国人のニーズにぴったりな企画だ。

さらに「道産酒」は、JTBグループのネットワークを活用して、海外への販路拡大を試みている。これまでも、いくつかの道産酒メーカーが見本市や商談会で海外に行くことはあったが、結果を出せずにいた。そこで、足掛かりを求めたのがグループ企業のJTB西日本にある食農海外販路支援室だ。

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