旅行業を超えた「交流文化事業」で
次の100年を拓くJTBグループ
JTBグループ
交流文化事業に潜在する
国際展開力と成長性
ところで、なぜJTBグループが地域の活性化に取り組んでいるのか。旅行業というと、有名観光地や人気スポットを組み込んだパッケージツアーを作って売る、あるいは法人を相手にMICEを提案して売るのが仕事というイメージがある。もちろん、JTBグループは団体企画商品「地恵のたび」シリーズに東大阪市の「モノづくり観光」プログラムを取り入れたツアーを企画し販売している。しかし、独占販売ではなく、主体は大阪モノづくり観光推進協会でほかの旅行会社にも提供しているのだ。一見すれば、JTBグループにとってのメリットは薄い。だが、JTBグループにとって、いまや地域活性化が社業を支える大きな柱の一つになっている。
JTBグループの創立は1912年、すでに100年以上の歴史がある。この間、旅行だけではなく出版、システム企画・開発・運用などのIT、広告、教育など幅広い事業を行ってきた。世界を見れば35カ国、100都市、486拠点で事業を展開し、グループ企業は約180社にもなる。
これだけの大企業グループを駆動させているのは、人々の動きだ。人が動き集まれば、人と人、あるいは人とモノ、人と生活文化など、さまざまな交流が地域に生まれる。こうした「地域交流」は経済効果をもたらし、まちがにぎわい、社会全体に活力が沸く――これこそが、JTBグループが着目した点だ。旅にフォーカスした自分たちのビジネスを再定義し、旅行業を超える“交流文化事業”を新たな事業領域ととらえたことで、地域活性化がJTBグループの本流ビジネスに台頭したわけだ。
多くの人が集まる世界中のまちの魅力を知るJTBグループが、この知見を活用して、その土地ならではの“眠れる資源”を掘り起こし、磨きをかけて新しい価値を生み出し、旅という形に一から商品化する。地元の人々とともに、より魅力的で継続性のある地域活性化につなげようというわけである。訪れる観光客にとっても、それは濃密な体験と忘れがたい思い出となる。こうした仕組みをつくり世界へと広げていけば、JTBグループの事業分野の拡大、成長にもつながるはずだ。