旅行業を超えた「交流文化事業」で
次の100年を拓くJTBグループ
JTBグループ
「モノづくり観光」で
東大阪市を活性化
交通の便の良さから、京都や大阪を訪れる修学旅行生の宿泊先となっている東大阪市。子どもたちが、ただ寝泊りして去っていく状況を打開しようと、2008年にホテルセイリュウの提唱に賛同した地元有志が東大阪教育旅行思い出づくりサポートプロジェクト連絡協議会(現・一般社団法人大阪モノづくり観光推進協会)を立ち上げた。
東大阪市のもう一つの顔は、“モノづくりのまち”だ。「歯ブラシから人工衛星まで」と形容されるように、何でも作っていることが東大阪市のモノづくりの特徴だ。だが、グローバル化の裏で起きている国内空洞化と無縁ではない。かつて1万2000社近くあった中小企業は、約6000社にまで減少した。このままではモノづくりの灯が消えるという危機感もまた、地元の人々の地域活性化に対する思いを熱くさせた要因だ。
では、どうするか。東大阪市がアピールできるものは、やはり高度な技術を持つたくさんの町工場だ。町工場と職人と、世界に通用する技術をテーマにした「モノづくり観光」というアイデアが浮かぶが、どう形にして、売り込めばよいかわからない。そこで地元有志が相談を持ちかけたのが、修学旅行を介してつながりのあったJTB西日本だ。
以後、JTB西日本と協会の連携・共同歩調のもと地域の特性を生かした商品開発を進めてきた。こうして、モノづくりの楽しさ、大切さ、働くことの意義などを町工場の職人たちが、直接語りかける独自の「モノづくり観光」プログラムができあがったのだ。
大阪モノづくり観光推進協会の専務理事・事務局長の足立克己さんは「町工場の職人たちの本気は、修学旅行で訪れた生徒たちの心を揺さぶるだけでなく、職人自身のモノづくりに対する誇りを高め、生徒たちに教える喜びという新たなモチベーションをもたらした」という。
このプログラムの参加企業の1社、上田合金・社長の上田富雄さんも「鋳造を50年もやってきたが、まだ満足できていない。本物を作ることは簡単ではないと、子どもたちにも感じてほしい」と話す。こうしたことが奏功し、年間数百人に過ぎなかった東大阪市を訪れる修学旅行生は、今日では7000人にものぼる。元気を取り戻しつつある東大阪市は今後、子どもだけでなく企業や教職員向けの研修、さらにはインバウンドも視野に入れたプランを開発する予定だ。