2016年の世界株式市場は、年始から波乱の展開が続いている。
1月、産油国間の不協和音によって原油安が止まらなくなっていたうえに、イランとサウジアラビアが国交を断絶するという衝撃の報道が駆け巡った。日本を含む主要先進国株を対象とするMSCIワールド株価指数(現地通貨ベース)は、年初来安値をつけた2月11日時点で15年末比12.2%も下落している。
今の混乱は、リーマンショック以来米国が続けてきた「デフレリスク対応型」の金融政策から、マイルドなインフレを前提とした金融政策へ戻ろうとしている途上で生じた出来事と考えられる。
1990年代、「インフレ経済」から「ディスインフレ経済」へと経済状況が変わる中で、米国の金融政策の目標も変わっていった。
すなわち、インフレを抑制するための金融政策からマイルドなインフレを維持する金融政策へのパラダイムシフトである。しかし94年2月に利上げに転じた後、メキシコ通貨危機、アジア通貨危機と新興国経済の混乱が起こった。そのため米国は利上げをいったん凍結、99年6月から本格的に再開し、00年5月まで続けた。途中の一時的な利下げの局面も含めると足かけ7年にもわたる長い利上げ期間となった。
一方今回は、13年10月に米国が量的金融緩和(QE)の縮小を始めてから2年4カ月が経った。市場との対話を重ねながら金融政策のパラダイムシフトを混乱なくやり遂げるのは非常に困難なことだ。
FRB(米国連邦準備制度理事会)は金融政策の2大目標として、物価安定と最大雇用の達成を掲げている。これは「デュアル・マンデート」と呼ばれる。昨年末の利上げの際、最大雇用についてはほぼ達成したという確たる認識がFRBにあり、統計的裏付けもあった。しかし物価については、原油安の影響でゼロ近傍のインフレ率に沈んでいた。しかしこれは一時的なものであり、原油安が落ち着けばインフレ率は目標(米国ではプラス2%)に近づく展望もあった。つまり物価面の目標については「見切り発車」の状態で利上げに踏み切ったのだ。これはまた金融緩和を強化する日本と欧州との政策バランスのうえでギリギリ実施できた利上げであった。その分、その後の政策判断は極めて慎重に進める必要があった。したがって原油安が想定より進んだ段階で、政策スタンスの仕切り直しは避けられなくなる。これが年初からの市場の混乱の要因なのではないか。
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