年初の為替市場では、世界的なリスクオフ(リスク回避)の流れを受けて再び円高が進んでいる。こうした状況を受け、日本銀行は1月29日にマイナス金利の導入に踏み切ったが、円安効果は2014年10月の追加緩和後と比べかなり短命に終わったようだ。アベノミクスや日銀緩和で進んできた円安トレンドはここにきて変調を来しているのだろうか。
円安が進みにくくなった最大の要因はグローバルな金融経済環境の変化だと筆者は見ている。これは日本円がグローバルなリスク・センチメント(市場心理)の動向に左右されやすいためだ。すなわち、高リスク資産に買いが集まるリスクオンの局面では円安圧力がかかる一方、リスクオフの局面では安全資産として円が買われやすい。
08年のグローバル金融危機や、11年の米国債務上限問題および欧州債務危機を受けた世界的な不確実性の高まりで円高圧力が強まり、ドル円相場は11年10月に一時1ドル=75円台まで下落した。
その後、12年以降は欧州債務危機の収束や米国財政問題の解決で世界的にリスク志向が回復し、今度は急激な円安局面が訪れた。アベノミクスおよび日銀金融緩和がこれほど大幅な通貨安につながったのも、そもそも良好なグローバル金融経済環境が円安を支持していたことが大きかったと考えるべきだろう。
そうした円安の流れも昨年8月に潮目が変わった。8月11日に中国人民銀行が人民元政策を変更するとともに、急激な資本流出を背景とした元安・中国株安に対する懸念から、世界的にリスクオフの流れとなり円高圧力が強まった。円の総合的な強さを表す名目実効為替レートを見ると、昨年8月に円高基調に転じた後、足元では14年10月の日銀金融緩和拡大前の水準まで上昇している(図1)。実際、15年は主要通貨の中で、日本円がドルとスイスフランに次いで3番目に強い通貨だった。
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