NHKのテレビドラマ『おしん』をご存じだろうか。このドラマが描いているのは、戦前の貧しい農村の暮らし。大根飯を食らうようなこの時代、確かに食糧が不足していた。化学肥料がないため食糧の生産性が低く、農村に多くの人手が必要だった。
しかし、戦後に生まれた世代は私も含めて『おしん』のような極貧の農村の姿を見たことがない。日本において食糧が成長の制約でなくなったのは自明なことだ(編集部注:現在日本では、世界の食糧援助量の2倍に当たる年間500万~800万トンの食品が、本来食べられるにもかかわらず廃棄されており、食糧不足でないことを端的に示している)。
実は世界的に見ても食糧は余っている。世界の穀物生産量は2014年度に過去最高の24億トンに達し、1970年に比べ2.2倍になった。食糧が余っているからこそ価格が下がり、農業で収入を増やせないので、農村から都市部への人口移動が起きて、工業化が進展している。
アフリカの飢えた子どもの映像などを目にすると、食糧が余っているとは信じがたいかもしれない。だが、ソマリアなど紛争地域を除けば世界に飢餓といえる状況はほとんどない。世界で約8億人が飢餓に苦しんでいると報じられているが、国連食糧農業機関(FAO)は「飢餓」という表現は使っていない。元の英語は「malnutrition(栄養不足)」であり、翻訳によってだいぶイメージが曲げられている。
将来、人口爆発によって食糧が足りなくなると指摘する人がいる。だが現在、人口爆発は勢いよく止まっている。確かにアフリカのサブサハラ地域や、アフガニスタンなどアジアの一部では今でも人口爆発が起きている。だが世界の人口の半数が住むアジアではむしろ出生率が下がっている。インドの大都市や中国、タイでは出生率が2を割り込んだ。女性の高学歴化、社会進出が進んだ結果、晩婚・晩産につながるという構図が、各国に共通して見られる。
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