大公開! スタンフォードの「研究室」とは オフィスの快適さは生産性に結び付くのか?

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余談だけれども、このlatex(正確には、latexのコアの部分というか基礎であるtex)を作ったのはコンピュータサイエンスの有名な学者のドナルド・クヌースさんという人で、伝説によれば、彼は当時、自分が文章を書いている際に、当時のワープロの数式があまりに煩雑で美しくないのに我慢ができず、「じゃあ俺が作ってやるぜ!」と、自ら開発したのだとか。

それが評判になって、今ではみんなが使っているということらしい。それにしてもワープロソフトがイケてないからって自分で作るというのは、すごい話だ。

それはともかく、同じような理由か、パワポもイマイチ普及していない感じだ。ワードとパワポは兄弟みたいなものだから、パワポも数式を書くのに適しているとは言いがたい。スライド作りには、latexの拡張機能を使うのがスタンダードになっていて、パワポを使わない人も多い(ただパワポはアニメーションなどが使いやすいので、経済学の中でも分野によっては使われている)。

そんなこんなで、ちょっと特殊な業界であるために、パソコン事情も普通とは違っているようだ。

※こんな内輪話を書いたことには、一応、言い訳がある。これを読んだ誰かが、もっと使いやすいソフトとか作ってくれないかな、なんて勝手に期待しているのだ。初稿には現在のソフトがどう気に入らないかを長々と書いていたが、さすがにストップがかかってしまった(そりゃそうか)。興味ある方は個人的に聞いてください! ちなみに、この文章はMacにインストールしたWordで書いている。なんだかんだ言って、気軽に書き物ができるWordは便利だ。

研究に「研究室」は大事なのか?

この連載はいち研究者から見た日米比較を主旨のひとつにしているので、日米のオフィス事情についてもちょっとだけ書いておこう。

ちゃんとデータを取ったわけではないけど、日本の大学のオフィスはかなり広くてきれいだと感じる。オフィスに限らず、アメリカの大学では、経済学部の建物はずいぶんボロいのが多いと思う。

衝撃的だったのは、大学院時代を過ごしたハーバード大学の経済学部の学生用オフィスだ。半地下の部屋を6人でシェアしていて、なぜか隣のオフィスとの壁が一部ない仕様になっていたので、話し声が筒抜けだった。しかも窓の立て付けが悪いためかすき間風がよく入ってきた。ハーバードのあるケンブリッジ市(ボストンの隣にある市)は寒くて、冬には最高気温が氷点下なんて日もよくあったので、手が冷えて動かず、論文をタイプできないようなこともあった。

スタンフォードについて言えば、大学院生は個室のオフィスはなくて、フロアの大きな空間に学生ごとにパーティションを作って働いている。最近、大学院生の数は上昇傾向だったので少し狭くなったくらいだ。

とはいえ、そもそもフィジカルな研究室が研究に大事かどうかはまた別の話かもしれない。結論を出すにはしっかり実証研究をしなければならないけれど、僕の印象としては「あんまり重要じゃない」。

仕事柄、出張すると訪問先の教員のオフィスでおしゃべりをすることが多いのだけど、オフィスの広さや整頓具合は大学や教員個人でさまざまだ。完璧に整頓している人もいるし、足の踏み場もないほどプリントや本が床に散乱している人もいる。けれど実際のアウトプットを見てみると、オフィスのよさと生産性は関係なさそうだ。

ウチのオフィスはどこも狭いけど、教員も学生も、みんなバリバリ研究している。そんな同僚に誇りを感じる毎日だ。僕も頑張らないと。

というわけで、わが研究室の様子を徒然なるままに書いてきた。この記事から研究者というのがどのような仕事なのかを少しでもお伝えできていればと思う。そして(これは完全に僕の都合だが)、オフィス改善のいいアイデアを知りたいな、と思いながら書いたところもあるので、耳寄りな情報をお持ちの方はぜひ!

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