「絵が下手な人」と「上手い人」は、「本」の描き方にも差があります。それは「遠近感」の有無です。
私は本を読むのが好きで、アートと同じくらい、人生に欠かせない存在です。そんな身近な「本」も、立派な絵の題材になります。
でも、これにはちょっとしたテクニックが必要です。「本」を真正面から見たときは長方形に見えますが、「ただの長方形」を描いても「本」には見えません。なぜなら、そこに「遠近感」が表現されていないからです。
近くにある物体は大きく、遠くにある物体は小さく見えます。ひとつの物体においては、手前にあるパーツは奥にあるパーツよりも大きく見えます。また、手前から奥に向かう線は傾いて見えます。
つまり、この「遠近感」を絵の中に表現することで、まるで本物のような、いきいきとした絵が描けるのです。
「本」をリアルに見せる配置
本を、少し離れたところに、斜めに角度をつけて平らに置いてみましょう。この配置が「長方形」という形を変化させ、「本」をリアルに描くことを可能にします。
私の「30分で『本』を描く」レッスンでは、はじめに大きな三角形を描いて、「遠近感」を表現する練習をします。
まず、スケッチブックの幅いっぱいに、大きな下向きの三角形を描きます。下の2辺の上に、1カ所ずつ「しるし」をつけ、それぞれを上辺の両端の遠いほうの点と結びます。
そうすると、大きな三角形の中に、新しい2つの三角形ができますね。2つの三角形が重なってできた四角形の部分に「本の設計図」を配置します。
ここで、上辺の両端の点を「消失点」と呼びます。絵の中のすべての線は、水平線上に並ぶ2個の「消失点」に集約され、正しい「遠近感」を表現することができます。この技法は「二点透視図法」と呼ばれています。
さらに、大きな三角形の下の頂点から、少し下の場所に「しるし」をつけ、両側の「消失点」とつなぐと、「本の厚み」を表現する線になります。
つまり、「絵が上手い人」は、「遠近感」を意識して、絵の中で物体の大きさ、距離、形などを表現できているのです。それが「リアルな絵」に見せる秘訣でもあります。
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