「国民皆保険」が崩壊すると何が起こるのか アゼルバイジャンにみる「医療階層化」の教訓

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医療皆保険制度はなぜ必要か? アゼルバイジャンの社会主義経済の崩壊後に起こった医療保障制度の末路を例に解説する(写真:SoutaBank/PIXTA) 
世界から「奇跡の制度」と称賛される日本の医療皆保険。もし皆保険がなくなると何が起こるのか。厚労省年金局長やアゼルバイジャン大使など要職を歴任した香取照幸氏の近著『民主主義のための社会保障』から一部を抜粋し、医療皆保険のメリットと必要性を考える。

ただより高いものはない?

私がアゼルバイジャン大使として赴任中、2018年の年末に某民放放送局で、アゼルバイジャンを紹介する紀行番組が放送されたそうです。その中で「アゼルバイジャンは産油国、金満国家で医療も義務教育も無料、なんとすばらしい」という話があったと聞きました。

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大使としてアゼルバイジャンで3年間を過ごした経験から申し上げると、それは半分事実ですが、半分は事実ではありません。この話、「社会保障としての医療サービス」を考えるうえでとてもよい教材になるので、わが任国の経験について紹介したいと思います。

確かに、医療サービスは無料で提供されています。それは、金満国家だからではなく、旧ソビエト連邦時代からそうなっているからです。

各国の医療保障制度には、大きく分けてイギリスや北欧諸国、旧社会主義国などに見られる税財源によるものと、フランスやドイツ、日本などの保険財源によるものがあります。アゼルバイジャンは旧ソ連の構成国だったので、独立前から採用されていた税財源による無償の医療保障システムをそのまま継続しているのです。

財源はすべて税で賄われますから、保険料はありません。一部負担もなく無料です。それだけを聞くと「おお、すばらしい」と思われるかもしれませんが、世の中そううまくはいきません。よく言うでしょう、ただより高いものはない、と。

社会主義経済は計画経済ですから、医療サービスも計画的に提供されます。旧ソ連時代、政府は計画的に各地域に基幹病院を設置し、そのブランチとして医療センター(診療所)を全国に配置しました。病院・診療所はすべて国営か公営で、医師も看護師も医療関係者はみんな公務員。そこで、すべての人民に平等に医療サービスが「配給」されていました。

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香取 照幸 上智大学教授、未来研究所臥龍代表理事

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かとり てるゆき / Teruyuki Katori

1980年旧厚生省入省。在フランスOECD事務局、内閣参事官(総理大臣官邸)、政策統括官、年金局長、雇用均等・児童家庭局長を歴任。その間、介護保険法、子ども・子育て支援法、国民年金法、男女雇用機会均等法、GPIF改革等数々の制度創設・改革を担当。また、内閣官房内閣審議官として「社会保障・税一体改革」を取りまとめた。2016年厚生労働省を退官。2017年在アゼルバイジャン共和国日本国特命全権大使。2020年4月より現職、同年8月より一般社団法人未来研究所臥龍代表理事。主な著書に『教養としての社会保障』(東洋経済新報社)がある。

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