コロナ禍で威力を見せた「ビジネスマッチング」 輸入途絶えた医療用ガウン生産を短期間で構築

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医療用ガウンの縫製作業。岩手県陸前高田市のボンマックスアパレルにて(写真提供:ボンマックス)

新型コロナウイルスの感染拡大で露呈したのが、製造業のサプライチェーンの脆弱さだった。マスクや医療用ガウンなど感染防止を目的とした医療用防護具は輸入依存度が高いうえ、中国などの輸出規制によって入手が困難になった。政府は国産化に着手したものの、零細企業が多い国内の縫製メーカーを束ねて量産を実現することは容易ではなかった。そうした中、ベンチャー企業がウェブ上で構築した企業同士を結びつける「ビジネスマッチング」の仕組みが、短期間での生産立ち上げに威力を発揮している。

岩手県陸前高田市にある、中堅ユニホームアパレルメーカー「ボンマックス」(東京・中央区、外川雄一社長)の縫製工場。新型コロナウイルスの感染拡大で注文が減少した企業のユニフォームに代わって生産ラインを支えているのが、医師や看護師が着用する医療用ガウンの需要だ。約50人の担当者が4月下旬から縫製の作業に従事。ゴールデンウィーク中も出勤して5月末の納期に間に合わせた。

新型コロナの患者が増加の一途をたどっていた3月、医療用ガウンはそれまでほぼ100%を依存していた中国からの輸入が途絶えた。事態を深刻に受け止めた政府は、マスクや医療用ガウン、人工呼吸器などを調達するためのプロジェクトチームを編成。国産品で需要の一定割合を賄う方針を固め、生産にたずさわる企業を募った。

この時、政府に掛け合って医療用ガウンの受注を取りまとめたのが、企業同士をつなぐビジネスマッチングを主力とするベンチャー企業の「リンカーズ」(前田佳宏社長、東京・中央区)。ボンマックスはリンカーズのプロジェクトに参加した。

医療現場を救ったガウンプロジェクト

医療用ガウンの製造の仕組みは大方、次のようなものだ。

厚生労働省との契約に基づき、リンカーズと連携する半導体・電子部品商社レスターホールディングス(レスターHD)が国内大手素材メーカーから材料である不織布を調達。ボンマックスなど元締めとなる3社を通じて、全国の縫製業約150社にガウンを発注する。できあがった製品はレスターHDが買い上げ、厚労省の指定倉庫に納品。そこから全国の医療機関に届けられる。当初の契約は月間100万着で、その後も規模は順次、拡大している。

このプロジェクトの成否のカギは、全国に散らばる縫製メーカーを短時間で組織化できるかだった。ここで威力を発揮したのが、リンカーズが構築したビジネスマッチングシステム「リンカーズソーシング」だった。

クラウド上の同システムには約2万7000社の情報が収納されているほか、中小企業とのつながりの深い地方銀行や経済連合会など約350にのぼる連携先機関の職員を「コーディネーター」として登録。コーディネーターとつながりを持つ企業を含めた全体の数は10万社を超えるという。

「当社の仕組みを用いれば、全国の縫製メーカーを短期間に集めることができる」

前田社長はガウン調達プロジェクトを担当していた経済産業省に働きかけ、契約にこぎ着けた。

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