日本で「IR開業」を狙う米国カジノ企業の現在地 国会議員の汚職事件や世論の逆風もあるが…

✎ 1〜 ✎ 38 ✎ 39 ✎ 40 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

WYNNリゾーツ(WYNN)は、ラスベガスとマカオで「ウィン」と「アンコール」の2つのタワーを持つ高級カジノリゾートホテルのほか、2016年開業のマカオ「ウィンパレス」、2019年6月開業のボストンの「アンコールボストンハーバー」の4つの高級カジノリゾートホテルを所有・運営している。

「アンコールボストンハーバー」(写真:WYNNリゾーツ)

2019年の売上高は66億1100万ドルで、このうちカジノが7割を占める。日本のIRに関しては、横浜を視野に積極的に取り組む姿勢を表明している。

シーザーズ・エンタテインメント(CZR)は、1937年にネバダ州リノで創業した老舗で、「CAESARS」「HARRAH’S」「HORSESHOE」の名前でホテルやカジノを運営している。

2019年1~9月期の売上高は65億7300万ドルで、うち半分はカジノからの収入となっている。2019年6月に同業のエルドラド・リゾーツ(ERI)による買収が発表され、2020年前半に統合が完了する見込みだ。なお、同社は2019年夏に日本でのIR運営のライセンス取得に向けた活動を中止し、撤退を発表した。

買収する側のエルドラド・リゾーツは、コロラド州、フロリダ州など全米11州で23のプロパティを所有および運営する大手カジノエンターテインメント会社で、2019年1~9月期の売上高は19億3600万ドル。両社の合併により16州で約60の国内カジノリゾートとゲーム施設を持つ全米最大のカジノリゾート企業が誕生する。

「ハードロック」もカジノ企業

ここまでは上場企業を取り上げてきたが、上場していないカジノリゾート企業もいくつか紹介したい。

まず、日本でも「ハードロック・カフェ」を展開するハードロック・インターナショナル。

「セミノール ハードロック ホテル&カジノ ハリウッド」(写真:ハードロック・インターナショナル)

2006年にフロリダの先住民セミノール族が買収し、現在は世界76カ国でホテル31、カジノ12、日本の7店舗を含む183のカフェを展開している。

2019年10月に開業した「セミノール ハードロック ホテル&カジノ ハリウッド」は、世界初のギター型ホテルとして話題を呼んだ。日本のIRでは北海道・苫小牧にフォーカスしている。

同じく苫小牧に注目している企業がモヒガン・ゲーミング&エンターテイメントとラッシュ・ストリートだ。

ギリシャにおけるカジノ構想(写真:モヒガン・ゲーミング&エンターテイメント)

前者は1996年にコネチカット州で創業し、アメリカ国内と韓国・仁川でカジノリゾートを運営している。2019年にはナイアガラフォールズのカジノリゾートのプロバイダーとなり、2020年にはラスベガスにも進出する。

2019年9月には、現地企業と提携し、ギリシャ初の統合リゾート参入を発表している。未上場企業だが決算が公表されており、2019年9月通期の売上高は13億8800万ドルで、このうちカジノが3分の2を占めている。

後者のラッシュ・ストリートはフィラデルフィアやピッツバーグなどに4つのカジノリゾートホテルを所有・運営している。ピッツバーグには、2021年に新しいホテルが完成する予定だ。

カジノというと、豪華な建物や設備、きらびやかなネオン、ゴージャスで華やかな高級イメージがつきまとう。一方で、2018年7月にはギャンブル等依存症対策基本法が成立したように、マネーロンダリング(資金洗浄)の危険性、治安の悪化など、指摘される負の側面も少なくない。

さらに、直近では新型コロナウイルスの感染拡大が影響し、マカオのカジノはすべて2月5日から15日間にわたり営業が停止された。新型肺炎の被害拡大はマカオだけでなく、今後の日本における観光業への影響も懸念されている。

すでに、ここに紹介した企業の多くが日本で活動を行っている。政府は、2020年春にIR整備法をもとにIR開業に向けた基本方針を策定し、公表する見込みで、その後にIRを設置する自治体3カ所を決定する。

これまで無縁だったカジノ企業とはどういうものか、今からでも注目しておいても遅くはない。

加藤 千明 ファイナンシャル・プランナー、「アメリカ企業リサーチラボ」運営

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

かとう ちあき / Chiaki Kato

大手証券会社勤務の後、1993年7月、東洋経済新報社に入社。主に統計指標をベースとした刊行物を担当する一方、電機・化学業界担当記者としてITバブルの全盛期と終焉を経験。その後は、マクロ、マーケットおよび地域動向を主戦場に、データをもとにした分析、執筆などを行う。2005年より『東洋経済 統計月報』編集長、2010年より『都市データパック』編集長。『米国会社四季報』編集部を経て、2021年2月に退社。現在はファイナンシャル・プランナーとして活動するかたわら、アメリカ企業の決算情報を中心にSNSで発信。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事