「憎む前に離婚」現代夫婦のリアルな決断理由 浮気"疑惑"時点であっさり離婚する人も…

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「元夫はいい人なんですよ。子どもたちにとっても、いい父親。だけど私にとって、“男”ではなくなっていったんです。私はどんなに結婚生活が長くなっても、彼とは男と女でいたかった。だけど彼は、父親としてしか生きようとしなかったんです」

学生時代から付き合い、その後、遠距離恋愛も耐え抜いて大恋愛をした末の結婚だったと彼女は言う。だからこそ、ずっと恋人気分を大事にしたかった。

「共働きだから家事も育児も協力しながらやってきた。でも子どもたちが大きくなっていくと、夫は私に甘えるようになったんです」

仕事の愚痴を垂れ流し、ときに不機嫌に黙り込む。大人は自らの機嫌を自分でとるべきだと思っていたチグサさんには、そんな夫の変化が耐えられなかった。

「家庭は楽しい場でありたいですよね。家族だから、ときにはケンカしてもいいけど、なんでもポジティブに、オープンに話し合いたい。以前は夫ともそう話していたのに、いつしか夫はネガティブなことは話すけど、楽しい雰囲気を作る努力をしなくなった」

何度かそのことを指摘したが、夫は黙り込むだけ。仕事のことも子どもたちのことも不安や心配が先に立ち、あまり前向きに考えられなくなっていたようだ。

「もう愛していない」と感じた日

「何より、彼の生活がマンネリになったんでしょうね。それは夫婦のマンネリでもある。このままいったら、私は夫を嫌いになる。そう感じました」

もう愛していない。ある日、そう感じた。自分を偽って生きるのはいやだったし、夫を嫌いになるのもいやだった。だから離婚したい。彼女は率直にそう言った。

「夫は、きみはそういう性格だったよねって納得していました。子どもたちにも正直に話して、夫が自宅近くに部屋を借りたんです。子どもたちは基本的には私と暮らしていますが、好きなように行き来すればいい。彼が家に来てみんなで食事をすることもあります。離れてみたら、彼との関係も新鮮になった」

元夫とは、今後、どういう関係になるのかはわからない。ただ、離婚後はむしろ会話が増えたという。

「離婚したから、恋愛も自由にできる。子どもたちが大きくなるまでほかの人と再婚するつもりはないけど、今、好きな人がいるんです」

家族としての「情」より、男女としての「愛」を優先させる。結婚において、そんな考え方をする女性が少しずつ増えてきているのかもしれない。

取材・文 亀山早苗/作家・フリーライター。東京都出身、明治大学文学部卒業。恋愛、結婚、離婚などの男女関係、特に不倫については著作も多く、20年以上もの取材を続けている。近著に小説『人生の秋に恋に堕ちたら』(文芸社)など多数
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