「渋谷再開発」に巻き込まれたスナックの行く末 桜丘町で人気だったスナックは今

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薫子ママは続ける。

「桜丘町のころは、男性2時間3000円でドリンク代は別。女性は同料金だけど、飲み放題でやっていたわ。でも道玄坂に移ってからは、賃料がかなり上がってしまって。それで料金を値上げしなければならなくなったの。座るだけで1万円というお店も多い中で、なるべく良心的な金額はキープしているつもりだけど。スナック杉の子のよさは、安さ、気遣い、サービス精神、そしてノリだから」

246の歩道橋を渡ると帰路に就く気持ちに

スナック杉の子には、ママと一緒にお店を支えるマスターの飯島さんがいる。飯島さんは桜丘町の時代をこう振り返る。

桜丘町時代の杉の子。中央はマスターの飯島さん(筆者撮影)

「桜丘町には、下町風の人情味があったね。隣ビルをはじめ、近隣同士で持ちつ持たれつ助け合っていたものだよ。それこそ“人を育てていく街”だったんだ。桜丘町で働く人は、246の歩道橋を渡ると帰路に就く気持ちになってしまう。だからこそ、桜丘町の居酒屋やバー、スナックで飲むんだね。ナイトタイムを桜丘町で完結させる人は多かったよ。渋谷のど真ん中だけど、あの一角は下町風情があふれていたんだ」

下町風の人情味を感じさせる街、桜丘町。その後、道玄坂に移ってからはどうなのだろうか。

「人の往来が多いから、客数のパイは増えたかもしれないね。ただ、桜丘町のときのようにふらっと入ってくれる人は減ったかな。今は、多くの店舗が入っているビルの中にいるからね。いくつもある店舗の看板から、スナック杉の子を選んでもらうのは大変ですよ」

行き交う人の数は増えても、その分、競争も激しくなる。忙しない飲み屋街では、桜丘町のような下町風情を感じるのは難しいかもしれない。

芸能関係のお仕事をしている原さんも杉の子に足しげく通った1人だ。「渋谷のスナックに行ってみたいと思い、行きつけのバーに相談したら、スナック杉の子を紹介されてね。扉を開けたら、お客さんとママが昭和歌謡で盛り上がっていて。すぐにこの店が気に入りました」と話す。

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