薬局が病院の周りにやたらと溢れかえる事情

結局、患者の薬代負担を増やした政策の是非

都立墨東病院前に立ち並ぶ門前薬局。病院の真向かいの薬局が人気だ(撮影:今井 康一)

同様の風景は大病院の近くでは随所に見られる。東京・品川区の旗の台駅から商店街を抜けると、一際高いビルがそびえ立つ。1日平均の外来患者数が同じく約1400人の昭和大学病院だ。周囲には飲食店に交じって、背の低い14の薬局が密集して軒を連ねている。

以前は静かな住宅街だったところで再開発が進み、薬局の出店が断続的に続いた。「もうそろそろ飽和しただろうと思っていたら、また1店建ったという感じで、気がついたらずらりと並んでいた」。地元の商店主は当時を振り返る。

それから十数年、店舗の入れ替わりはあっても、薬局の数は減っていない。商店主は、「これだけあるのにどうやって経営を成り立たせているのか、つくづく不思議に思う」と話す。

門前薬局ほど楽な商売はない

「門前薬局をビジネスとして考えると、これほど楽な商売はない」。あるチェーン薬局の幹部は実情を語る。病院の前に店さえ出せば、自動的に患者が入ってきてくれるため、「顧客開拓なんて必要ない。その病院に合わせた薬に限ってそろえればいいので、在庫リスクも小さい。保険収入なので、取りはぐれがないのも大きい」。

そうしたビジネスモデルのため、「買収案件は枚挙にいとまがなく、これまでは個人経営の小規模店であっても、だいたい年商ぐらいの値段がついた」と、ある薬局コンサルタントは話す。この人物が知る中でも数年前、2店で年商5億~6億円ほどの薬局に、やはり同額ぐらいで買い手がついたという。チェーン薬局幹部によれば、「門前薬局の決め手は何と言っても立地。病院の出入り口に近ければ近いほどいい。それで評価額も大きく変わってくる」のだという。

こうした状況を国も問題視している。2015年、政府の経済財政諮問会議で当時の塩崎恭久厚生労働相は、「病院前の景色を変える」と発言し、乱立する門前薬局のあり方の是正に意欲を見せた。後任の加藤勝信厚労相も同様の認識を示し、2018年度の調剤報酬改定では、門前薬局に厳しい内容が見込まれる。実際、10月25日に開催された財務省の財政制度等審議会の分科会では、薬局の調剤報酬の大幅な引き下げを据える方針を示した。

財務省がそうした方針を示した背景には、薬局の収入である調剤医療費は、2001年度の3.3兆円から2016年度には7.4兆円へと2.2倍に膨らんでいることがある。この急増の理由の一つとして考えられているのが、先に触れた医薬分業の推進だ。

医薬分業を進めるため、病院や診療所が薬を出す院内処方より、外の薬局で受け取る院外処方の技術料が高く評価されてきた。薬剤師の人件費など薬局の運営費用を考慮したためだが、その結果、同じ薬を処方する場合であっても、院外処方の場合は院内処方と比べて3倍超の技術料が算定されている。

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