イクメンになるも地獄 会社に生きるも地獄 | こんな働き方があってもいいじゃないか

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自分の生きる場を拡げ、一つに限定しない

國貞 文隆(ジャーナリスト)
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ワーキングマザー、在宅勤務、ノマドワーカーなど、日本の働き方をめぐる議論が盛り上がっている。日本の働き方は多様化しつつあるものの、まだまだ女性にとって厳しい社会といえる。

働きながら産み育てたい女性、そして共に生きていく男性はこれからの世の中をいかに泳いでいくべきか。そして、どうすれば日本の男女は、幸せに働くことができるのか。晩婚化、少子化時代のライフプランニングについて少子化ジャーナリストの白河桃子氏と男性学の新鋭、田中俊之氏に話を聞いた。

対談の前編はこちら


30代後半、ワーキングマザー
「がんばり過ぎて救急車乗りました」

田中 若い世代は都会への過度の期待や変なこだわりがないので、大都市に人口が集中する状況は解消されていく気もします。そうした流れを止めないためには、働き方を変える必要がある。

白河 日本は狭いからどこにいても働けるはずです。ITの進化のおかげで、場所や時間に制限されない働き方がそろそろ実現してもいいと思います。

田中 会社中心の固定観念が邪魔なんでしょう。会社って電車に乗って通うものだと思い込んでいる。混雑するランチの時間も30分でもいいからズラせないものか、満員電車も時差通勤ができないものか。スーツって明らかに日本の風土に合っていないでしょ。なのに、ラフな格好だと批判されるに違いないと思い込んでいる。

白河 24時間働けないといい社員じゃないというところがありますね。お母さんやりながら、24時間働くのは絶対無理だと思います。30代後半で総合職のワーキングマザーに聞くと、話が壮絶過ぎて、「がんばり過ぎて救急車乗りました」みたいな話がどんどん出てくる。壮絶な両立話しか出てこない。

彼女達自身も「お母さんとしても完璧で、仕事も手を抜いてはいけない、私は甘えられない」とものすごく思い込んでいる。だから、女性が会社を辞めるときは、その気持ちを持ち続けられなくなったときに去っていく。

「私は出産前と同じように仕事はできない。評価されない」ということもあります。昇進ではなくて、役に立たない自分であることが女性にとってはすごく苦痛なんです。子育て期は、一時効率はダウンしても仕方ないと割り切らないとなかなか残っていけない。でも会社での評価は低くなる。

こうした議論はずっと繰り返されていて、育休を3年くれるよりも、戻ったあとの働きやすさをなんとかしてほしいという意見が多いんです。長時間労働の効率の悪い残業はやめましょう。会社にいる時間が長い人がいい評価をもらうのはやめましょうということです。

ただ、昭和の働き方をしてきた人は変えられないと思います。働きたい人は24時間働いてもいいと思う。でも、そうじゃない人の邪魔をしない。お互い共存していけるといいと思うんです。


田中俊之
(たなか・としゆき)

武蔵大学社会学部助教。社会学博士。専門は男性学、キャリア教育論。著書に『男性学の新展開』などがある。男性学とは男性が男性だから抱えてしまう問題を扱う学問

働かない男やイクメンは
世間から下に見られる?

田中 おカネを稼ぐことだけが人生ではありません。ワークライフバランスが流行り言葉でしかなくなってしまう。男女問わずライフの部分が大きな人がいてもいい。

白河 女性は、子供がいて働けないとなると会社員としての評価は貶められますが、その代わり、家に入ったらママになれる。しかし、男性が家に入るとそうはいかない。そこもまた変な話です。働かない女性は男性から下に見られるけど、働かないで専業主婦をしているのは、ある意味では勝ち組です。でも、働かない男性は、男性と女性から下に見られる。本当にかわいそう。不公平だと思いました。

田中 普通、ニートって聞いたら、「ああ、あのダメな働かない男性ね」と想像してしまう。ニート自体には性別はないのに。

白河 男女関係なく、望む働き方とライフスタイルができるというのが一番理想的なんですね。ただ、そうすると一番面倒臭いのは評価なんです。今まで会社のマネジメント層はわりと楽できたと思うんです。何も言わないでも、ずっと会社に残って仕事してくれる人が相手だったから、仕事も振りやすいし、それぞれの事情を斟酌しなくてもよかった。会社に長くいる人に良い評価をつければよかった。

その評価軸をワークライフバランスに沿っていじるのは結構面倒臭いとは思います。マネジメント層も大変になるでしょうが、そのほうが効率的で、成果も上がるということを証明していけばいい。でも、今のままの状況で女性に進出しろ、と言うのは難しい。最初に全員ドブ板営業をさせて、挫けさせてしまうのは百害あって一利なしです。

田中 男性の働き方は狭いですね。働いていない男性がダメだと思われるのと同じで、「じゃあ、僕は一般職でいい」「契約社員でいいから、アフターファイブは役者としてがんばりたい」と言っても、フルタイム労働以外ないでしょうというのが常識としては強い。平日の昼間に男性が公園にいるのも変だと思われていたら、育児や地域参加も怖いと思ってしまう。

白河 その悩みはイクメンのお父さんたちがよく言っていますよね。公園に行っても輪に入れない。ママ友がほしいみたいな。でも、平日に小さい女の子とラフな若いお父さんがカップルで歩いている姿は最近見慣れてきました。

田中 そのあたりは空気が一変しましたね。「あの人、偉いなあ」という目で見られる。お母さんが忙しいから、外で遊ばせている。いいお父さんだと。子供を連れていると評価が上がる。もちろんお父さんが子どもと遊んでいることが「あたり前」になる必要があるわけですが、そこに至る前の段階のいい変化をちゃんと評価する必要があると思いますね。


白河桃子
(しらかわ・とうこ)

少子化ジャーナリスト、作家、大学講師。「婚活」ブームを共に巻き起こした山田昌弘中央大学教授との共著『「婚活」症候群』が7月下旬に発売され、注目を集める

ホワイト企業を選ぶか
3年死ぬほど働くか?

白河 今は専業主婦と言っても、おカネのない専業主婦が多いんです。正社員フルタイム共働き夫婦はお金持ちですが、その一方で専業主婦がお金持ちと貧乏に二極化している。中には家計が苦しいのに、子どもを預けられるリソースもなくて奥さんは働けないといった世帯も出てきています。でも、おカネがないときこそ夫婦で協力するしかない。

私が知っている限りでは、収入があるときとないときを計画的に自分のキャリアや人生の中に組み込んで考えている働く男女が徐々に出てきています。MBA留学の資金が足りなくて、夫にプレゼンして投資してもらった女性もいます。逆もあります。

その彼女は、旦那さんのほうも会社を辞めて、突然アメリカに行ってくると言い出しそうな人なんです。だから、彼女自身も働いて家と子供を守るくらいのことはできるように着々と準備中だそうです。夫婦の補完関係ってこういったものだと思います。逆に言えば、いつアメリカにいくかわからない旦那さんをもつということも、女性が働くインセンティブの一つになるんです。

田中 男性の場合は、残業時間が多い男性の妻は専業主婦の割合が高いというデータもあります。お父さんが働けなくなったら、住宅ローンや学費などの支払いができなくなってしまい、家庭が崩壊してしまう。その意味で、リスク分散の観点からも共働きのほうがいい。

白河 要はツブシの効く人間というわけではないですけど、いかに自分の価値を発揮できるのかということだと思います。女子学生たちに日頃から言っているのは、子供を産んで働くことを実現するためには、一つはそれが可能な場を選ぶ。つまり、女性にとってのホワイト企業を探す。もう一つは、明日会社をクビになっても、次のところへ行けるような自分になるということです。

資格でなくても、IT企業などで3年ほど死ぬほど働いて実力を蓄え、ライフイベントに合わせて働く場所を自分から選んでいけるような人になればいい。納税できる女になるには、会社にずっといるだけが選択肢ではない。

田中 まったく同感です。理想の働き方ができる場と言ったときに、その場を会社だけでとらえようとするのはもう無理なはず。場とは自分の居場所のことです。地域や家庭が居場所だと考える人もいるし、トータルの生活の場と考えた中の一つに、会社を位置づけたときに、全部が会社という人もいれば、地域、家庭に重きをおく人もいる。

働く場、生きる場というのを会社だけに限定しないで、もうちょっと開いていって、どんな選択をしてもうしろ指を指されないような社会になってほしい。個人としてできることは、とにかく自分の生きる場を拡げ、一つに限定しないことが大事だと思いますね。