アジアビジネスを牽引するリーダーを育成せよ 3ヵ国の交流から生まれる気づき
ディスカッションで浮き彫りになった3国間の違い
第1回目のテーマは日本の食文化に関するビジネスについて。ホスト校となるKBSの学生は、事前に日本の食文化ビジネスを分析し、訪問予定企業をリサーチ。その成果をビデオカンファレンスで中国、韓国の学生と情報を共有しつつ、事前準備を進めたという。実際に企業を訪問するフィールドスタディは7月上旬に7泊8日にわたって実施された。
訪れたのは、醤油メーカーの「キッコーマン」、醸造機器・プラントを製造する「フジワラテクノアート」、京懐石料理店「美濃吉」、日本酒メーカーの「月桂冠」、牛丼チェーンを展開する「吉野家」といった5つの企業と農林水産省。各訪問先の工場などを現地調査し、企業トップへのインタビューなどに臨んだ。各国2人ずつ6人のグループごとに一つの企業を担当し、各国12名、総勢36名の学生が、これらの企業の成長機会とその課題について分析し、各企業へ提言を行った。これらの結果は、三国が共有する企業ケースとしてデータベース化されている。
授業のコーディネーターである小幡績准教授はこの時の様子を「3ヵ国の学生が集まると、ディスカッションや企業への提言時などに各国の特徴が顕著に現れます。議論のなかで、改めて日本の良さや弱さなどが見えて来ました」と語る。
相手を尊重する日本と考えを主張する中国・韓国
小幡准教授は「韓国のKAISTの学生は非常に優秀で、分析力も議論の力もダントツに高い。日本の学生は、そのような切れ味では韓国の学生たちにかないませんでしたが、企業の個々の状況を丁寧に捉えて、現実的で現場目線の議論、提案が多かったと思います。中国の清華大学の学生は常にトップの視点でした。訪問した日本企業の経営者に対して、質問よりもとにかく提言をしまくる。中国ではこうやるべきだ、という戦略的な提案をとことんしていました。日本の学生は、トップに聞くときも、実際の現場はどうなっているか、実際にどのように日常的な問題があるのか、という質問が多く、目線の違いが際立っていました。そして、やはり、日本はすごい。日本には有名でない面白い企業が日本各地にある。日本は奥深いと三国の学生は鮮烈な印象を持ったでしょうし、また、日本の学生のおもてなし能力の高さに、韓国、中国の学生は驚き、みな日本の大ファンになりました」。