「父が逝った」、国王を失ったタイ国民の不安 プミポン国王なきタイとは?
軍事政権のプラユット暫定首相は、「計り知れない悲しみ、深い悲しみと別れ」に国が包まれていると語った。
首相はまた、治安が最優先事項だと述べ、企業は通常通り営業して、投資家には株を投げ売りしないよう呼びかけた。業界関係者らによると、金融機関の営業と市場取引は14日も通常通り行われる。
「父が逝った」
バンコクの旧市街地にある宮殿や寺院、官公庁や交差点には兵士が立ち、治安が強化されている。
14日早朝には、サックスでジャズを演奏する国王のモノクロ映像が全テレビ局で放送された。
プラユット暫定首相は、ワチラロンコン皇太子が王位継承をもう少し後に延ばし、国民と喪に服す時間を求めていることを明らかにした。
「新しい国王陛下、万歳」とプラユット暫定首相は語った。
タイには厳しい不敬罪法があり、継承について国民が議論する余地はほとんどない。
民事政権の樹立に向け、軍事政権は来年に選挙を実施し、民政への監視を確実にする新憲法の成立を遂行すると明言している。軍は王位継承においても確固たる支配権を握るとみられる。
プミポン国王の死去が発表されると、国王が入院していた病院の外で祈りをささげていた数百人の国民に悲しみと苦痛が広がった。
「奇跡を願ってここに来た。間違いであってほしい」と、恋人と一緒にやって来た32歳の弁護士は語った。恋人は、彼女が経営するレストランはしばらく営業を停止するとし、「まるで私たちの父が逝ってしまったみたい」と涙ながらに話した。
公共セクターの服喪期間は1年
病院の川向かいにあり、バックパッカーが集まるカオサン通りに連なる店やレストランはいつものようににぎわっていた。
一部のバーは閉まり、多くが音楽の音量を下げていたが、警察によると、営業停止命令は出されていなかったという。
プラユット暫定首相は、喪に服す30日間は祝祭行事は避けるよう求めた。公共セクターの服喪期間は1年に及ぶ。
ほとんどのタイ国民はプミポン国王以外は知らず、同国王の肖像画はほぼ全ての世帯、学校、オフィスに掲げられている。
プミポン国王は晩年までほぼ毎夕テレビに登場し、カメラを首に下げ、地図を片手に、雨が降るなか、地方の開発プロジェクトを重い足取りで視察する様子がしばしば紹介された。
84歳のシリキット王妃も近年、体調を崩されている。
報道官によると、政府は国民が悲しみを乗り越えるのを手助けするため、電話相談ホットラインを設置した。
プラユット暫定首相はまた、この状況を利用して問題を起こそうとする者をけん制した。
短期的にタイの株式やタイバーツ相場の値動きが荒れ、消費が落ち込む可能性があるが、王位継承が順調に行われると仮定するなら、経済が大きく混乱する公算は小さいと、コンサルティング会社ユーラシア・グループは国王の死去以前に発表した報告書で指摘していた。
(Robert Birsel記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
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