第2回グッド・アクション表彰式に
日本企業の活力を見た
リクナビNEXT
<現場活性化部門>
株式会社エストコーポレーション
社員のやりたい仕事と、経営陣がやってほしい任務はかならずしも合致するわけではない。そのマッチングを円滑にし、社員のモチベーションを上げることに成功したのが、医療・福祉関連サービスを提供する株式会社エストコーポレーション。
以上の5つがベスト・アクションとして表彰された取り組みだが、前出のアキレス美知子氏は、この第2回表彰には、ある特徴が見いだせたという。
「コミュニケーションの仕方にテコ入れした例が多かったですね。コミュニケーションのあり方が過渡期にあるんです。日本企業はひと昔前まで、部下を叱ったあと、飲みに行ってフォローするということをしてきました。最近、特に若い世代はSNSなどのテクノロジーを使いこなす反面、リアルのコミュニケーションが十分になされていないケースが増えています。
グローバル企業の大半は、さまざまなツールを駆使しながら、よりフレンドリーに社員と接するにはどうすればいいか?ということを模索し始めている時代。日本の企業も今後はそうしたツールをいかに使いこなすかということがテーマになるでしょう」
グッド・アクションは2回目にして、内容に広がりが生まれている。細野編集長は「グッド・アクションを開催するメリットは、『何が』実を結ぶのかを開示できること」と説明する。事実、表彰式の場では受賞企業同士、どのように取り組みを推進したか、意欲的に情報交換する様子が見られた。
最後に、審査員の守島教授に、第2回グッド・アクションの総括をいただいた。
人事が本領を発揮する時代がやってきた
今回は、内容が充実していたように思います。昨年よりも、「働きがい」や「働きやすさ」といった働く人のための取り組みが目立ち、そもそもの施策の目的がわかりやすかった印象です。
今、企業に求められているのは、表層ではなく、『深層のダイバーシティ』の活用。これは、目で見てもわからない世界で、「グッド・アクション」でいえば、働く人の価値観や大事にしているものを指します。これまで管理しにくかったものを表面化し、モチベーションや働きがいのために活用する努力がなされはじめたのです。今後、企業としては、その深みに対応するのが課題だと思います。
たとえば、NTTコミュニケーションズの例は、「中高年の活性化に成功した」というだけでは言い尽くせない。実は、50代は多様な価値を持っている人たちです。人事が、一人一人持っている個別の考えを明らかにし、どうすればいいかという対策まで「話し合った」ことが大きな評価ポイントだと思います。個人をいかに浮き立たせるかということが、人事として重要なのです。
また、オンデーズの取り組みからわかるのは、経営側と仲間側から見える世界は違うという事実。仮に経営陣は評価していなかったとしても、みんなから見たら大好きで、信頼できる人に光を当てられる仕組みが大きく評価されました。
もちろん、人事は、最終的には経営にいかに貢献するかがゴールです。楽しい施策はあくまで手段で、楽しいことがどう業績に結びついていくかを考えることが重要だと思います。
バブル経済が崩壊し、正規雇用システムが失われて以来、働く人を大事にする人材マネジメントは、次第に忘れられてきました。でも、働く人を大事にした取り組みに光を当てていくことで、最終的に経営にも関わることにつながるという重要なメッセージになると考えています。
今後は、従業員の成長をサポートする取り組みが増えるといいなと思います。ただし、人を成長させることは、時間もかかるし、難しいものです。どんなに社員を楽しませたり、仲間意識を作ったりしても、長期的に見れば、社員を成長させなければ意味がありません。
人事は最終的には、いかに人を成長させるかが本分なのです。有能な社員をスカウトする戦略のための人事も大事ですが、それだけでは、ただのダイヤモンドの原石に過ぎません。それをいかに磨いて輝かせるかが、人事が本領発揮する部分なのです。
守島教授の言葉、そして今回の受賞事例。その取り組みを紹介するグッド・アクションには、日本の活力が凝縮されている。さあ、来年はどんな取り組みが?