三井物産も参画する「キャリア大学」の正体 人工知能に負けない若者を育てよ 

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一度の交渉ではクリアできない設定のゲームを通じて、総合商社のビジネスを学ぶことができる

事業説明に始まり、現地に足を運ぶ、英語を使う、人間関係を構築する、粘り強く交渉する、力をあわせる……。世界中の企業や時には政府とタフな交渉を繰り返していく総合商社のビジネスが凝集されたものだといえよう。

参加した学生は「無茶振り」に一部戸惑いつつも、総合商社のビジネスに触れることができ、満足した様子だった。自信にあふれた社会人に会えたこと、社会で求められる力とは何かのヒントになったこと、無料でここまで体験できることなどが満足のポイントだった。何人かの学生にインタビューしたが、皆、先輩や仲間の口コミやFacebook経由でこのイベントを知ったとのこと。感度の高い学生の間で話題になっている取り組みだといえよう。

社会のことを知るキッカケに

プログラムを企画した三井物産の人材開発室に意図などを聞いてみた。三井物産として、この「キャリア大学」には立ち上げ時の3年前から参画している。もともと、学生の「内向き志向」に危機感を持っていた。「人の三井」と言われる三井物産として、学生にとって将来の職業選択のヒントになるような場を提供したいと考えていた。学生に、より視野を広げてもらいたい、そんな機会を提供したいという意志からこの企画に賛同し、参画した。

「今はSNSなどに情報があふれている時代。自分でアクションを起こし、足で情報を稼ぎ、自分で考える機会を作りたかった。学生時代の早期から将来について考える機会を提供したかった」と人材開発室の宇野弘晃氏は語る。

もちろん、単純にキャリア教育の場を提供するだけというわけではないようだ。大手総合商社は上位校の学生にとって人気業界であり、三井物産はその中でもトップクラスの人気を集めている。ただ、仕事の中身が理解されにくい業界でもある。一般論として総合商社に関しては「ラーメンからロケットまで」というキャッチフレーズが有名だが、具体的にどういう仕事をしているのかがわかりづらいものである。

より多くの人に知ってもらいたいし、業界の中身をより理解してもらいたいという意図は感じられた。とはいえ、1、2年生だけを対象にわずか40名である。1、2年生向けインターンシップ=青田買いというのも違う。利害関係を意識したわけではない、社会貢献色の強いものになっているといえるだろう。

1、2年生を対象にするからこそできること

「キャリア大学」を運営する特定非営利活動法人キャリアクルーズの理事長松本勝氏にプログラムの意図、ポイントなどを聞いてみた。

「就活生になると聞けないようなことも、1、2年生なら聞くことができるのですよ。そして、彼らの視点は企業の方にとっても新鮮なんです」と語る松本さん。たしかに、3、4年生になり、採用活動という場面になると学生は「内定をもらえるかどうか」が気になるし、質問をするにしても企業に気に入られるためのものになってしまうことだってある。企業も自分のことをよく見せようと思ってしまいがちだ。気づけば、空虚な背伸び合戦のような騙し合いになってしまう。

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