三井物産も参画する「キャリア大学」の正体 人工知能に負けない若者を育てよ 

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「キャリア大学」というのは、未来をつくるための取り組みの一つである。未来を担う人材を育てる取り組みなのである。より大きな取り組みにして、世界の中で自分たちの立ち位置、求められているものを実感させるプラットフォームをつくろうと考えているのである。外資系金融機関でプレイヤーとして活躍してきた松本氏だが、これからは、プラットフォームをつくった方が、世の中にインパクトを与えられるのではないかと考えたわけだ。

「キャリア大学」の取り組みはこのような松本氏の大きなビジョンのもとに動いている。

「若者を育てる」のこれから

最後に私の所感を述べることにしよう。この取り組み「若者を育てる」ということの今後について考えた。大学の教員をしているのだが、大学「だけ」で人を育てるのは違うと思うし、もっと言うと、大学に「会社」で活躍する人間を育てることを過度に期待するのも違うと思っている。

「キャリア大学」は採用色のないイベント

そんな中でこの取り組みは、まだ人生はもちろん、大学生活も軌道修正がきく1、2年生を対象にしていることについて価値を感じた。当初は「青田買いじゃないか」と思っていたのだが、いやいや、現場で見学させてもらったこの取り組みは採用色の一切ないイベントのように見えた。

それは、「キャリア大学」のコンセプトが明確なのと、参画企業の志だろう。そして、以前、企業で人事をしていた頃、1日インターンシップを担当したことがあって、その時は自分なりに完成度の高いプログラムを提供した気でいたが、その頃よりもさらにさらに進化した1日体感プログラムになっており、ジェラシーすら感じた。

就活時期繰り下げをめぐる論争はいまだに揉めているが、そもそも、あの施策が行われた際の目的は学修機会の確保、留学の促進のほか、キャリア教育やインターンシップの強化がうたわれていた。「手段」である「就活時期の繰り下げ」ばかりが話題となり、「目的」のことがあまり議論されていなかったというのが私の実感だが、この早期から社会のことを知ってもらう動きが「キャリア大学」以外にも広がるとよいなと思った次第だ。

「何もしてあげられません 実力の世界ですから」(『バクマン。』の新妻エイジ風に読むこと)なんて風に放置プレイにするのではなく、人が人を育てるという連鎖が、社会には必要だ。

常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家

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つねみ ようへい / Yohei Tsunemi

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年4月より現職。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。

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