三井物産も参画する「キャリア大学」の正体 人工知能に負けない若者を育てよ 

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1、2年生なら3年生になったら言えないような、ある意味「空気の読めない」と言われそうな、でも気になることを聞くことができる。それこそ、銀行に対して「ただお金を貸しているだけの会社だと思っていました」などという質問をする学生がいるかもしれない。さすがにこれは失礼だと思うものの、とはいえ、学生がそう感じていてしまったとしたならば、企業は社会に対して魅力の発信ができていなかったということになる。業界として企業として、社会にバリューが伝わっていなかったということが可視化される。

参画企業にプログラムを作ってもらう際は「会社のアピールの場ではないということを、かなり最初に強く言う」とのこと。1、2年生は会社選びの時期ではない。どんな業界が存在して、どんな役割を果たして世の中がまわっているのか、俯瞰したマップを見ることができるように、各業界の代表企業が集まって、参加した学生に社会の成り立ちを感じてもらうことを意識している。

自社アピールよりも、社会の成り立ちを知ってもらう

松本勝氏

社会人は何にやりがいを感じ、どんな夢を持っているのかも体感してもらうのだ。それでも、会社のアピールをしたいと考える企業もいるのだが、ほかの企業の取り組みや志を見て、姿勢を改めていくのだという。

各社のプログラムはその業界で求められるスキルやマインドについて、学ぶことができるつくりになっている。他社の取り組みについても話を聞いたが、社会の厳しさと楽しさ、学生と社会人の違いが感じられるプログラムになっていると感じた。

たとえば、先ほど紹介した三井物産のプログラムは、総合商社のビジネスでは英語を使うだけではなく、相手の視点でモノを考えることを学べるようになっている。広告代理店でのプログラムでは、コンペで優勝したチームのみに賞品が渡された。社会に出てからのコンペもそういうものだからだ。コンサルティング会社のプログラムでは、自分たちの思い込みではなく、課題を適切にとらえ、解決策を提案することが求められた。

大学、大学院では人工知能を専攻し、外資系金融機関を経て独立した松本さんには、ある強い危機感がある。やや極端に言うならば、将来は人工知能に人間が負けてしまうのではないかというものである。

人間を目的創造型、従属型という軸と、プロセス創造型、従属型という2軸で分けるとすると、これまでの勉強エリートは目的もプロセスも与えられたものを効率的にこなす人であり、大手企業に行く人は入ってから目的は与えられひたすらプロセスを考える人になってしまう。

ただ、未来をつくる人間、たとえば起業家というのは目的もプロセスも創造できなければならない。その大きなギャップや、ハードルをどう超えるか。人工知能が進化すると、プロセスも目的も勝手に創造されていく時代になるかもしれないという問題意識を松本氏は抱いている。

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