不穏だったジャニーズ会見「6つの違和感」の正体 合計4時間超…透けて見えた「甘さ」と今後への不安

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加害者のジャニー喜多川氏が亡くなった今、似たような性加害がすぐに起きることより、メディアによる忖度や隠蔽が明日繰り返される可能性のほうが高いだけに、モヤモヤを感じてしまう人がいるのは当然でしょう。

質問するメディアにも浴びせられる厳しい視線

異様な空気に包まれ、モヤモヤを感じさせたもう1つの理由は、会見に臨む質問者たちの姿。

これを書いている私は会見場には行かず、あえて自宅で4台のテレビを付けて民放各局の中継を見ながら、パソコンとタブレットでXとネットメディアの動きを追うという形を採りました。ジャニーズ事務所の登壇者だけでなく、メディアと世間の人々の動きを同時に見たかったのです。

そこで見えてきたのは、世間の人々が記者たちに抱く批判や疑問の数々。会見中Xには、記者たちへの批判や疑問がジャニーズ事務所へのそれを上回る時間帯が何度かありました。

主に批判や疑問の理由となっていたのは、「1人1問を守らないこと」を筆頭に、「質問なのに長すぎる」「ほぼ同じ質問の繰り返し」「わざと怒らせるようにまくしたてるなどの言い方」などのマナー。その他にも、自分が言わせたいことへの誘導を続ける人、調べてきたことを並べ立てて誇るような人、短い言葉が返ってきて「これでは終われない」とムキになる人、会見という公の場で東山社長と井ノ原さんに性被害の有無を尋ねる人、現役タレントの被害者名を出させようとする人などへの批判や疑問が見られました。

私自身、芸能関係の会見に100回以上参加したことがあるため、質問の難しさは理解できるものの、時代は大きく変わっています。今や会見は、会場の当事者だけのものではなく、テレビとネットの向こうにいる人も含めたものに変わり、中にはSNSを含め、エンターテインメントのように楽しもうとする人すらいるようになりました。

「メディアの質問者たちも登壇者同様に見られている」「多くの人がわかりやすい質問が求められている」という意味では、もっともっと質問のレベルを上げていかなければいけないと、自戒の念を込めて感じさせられたのです。特に媒体を代表して来ている人は、他社と比較されて当然ですし、それを信頼感アップやブランディングにつなげたいところでしょう。

また、メディア全体で「質疑応答の際は1分以上話さない」「類似質問は3度目以降控える」などのガイドラインを作ることも必要かもしれません。ネット上では一部の記者がやり玉に挙げられていますが、大切なのは批判されている個人を見て参考にすることではなく、「会見をどういう場にしていくのか」という全体の見直し。「記者たちが自由に質問を浴びせる」というこれまで通りの会見ではわかりづらいままで、メディアや質問者個人のイメージを下げてしまうだけでしょう。

ジャニーズ事務所に関して今後の対応を注視していくべきなのは言うまでもありませんが、同時にメディアと質問者の姿勢もチェックされ続けていくことを再確認させられる会見だったのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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