不穏だったジャニーズ会見「6つの違和感」の正体 合計4時間超…透けて見えた「甘さ」と今後への不安

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名称変更については、各タレントにもヒアリングしたことが小山慶一郎さんのコメントで明らかになりましたが、そもそも意見を求めるような問題ではないでしょう。現役タレントの中にも被害者がいる可能性もあるだけに、「こういう理由でタレントのために変えなければいけない」と説明してリーダーシップを取るべきでした。

井ノ原さんが見せた唯一の「甘さ」

6つ目の甘さは、メディアの忖度や圧力についての認識。この話も自分たちから切り出さず、「質問されたことだけ答えていく」という消極的な姿勢が見られました。

東山社長は、「メディアの方たちとは対話が必要だと思っております」と、ここでも具体的な内容は避けました。また、「やはり喜多川氏、そして、うちの事務所がすべて悪いんだと思います。そういうふうに思わせてしまった。そう感じさせてしまった」「『そういうふうに思われた』というのは事務所が悪いのだと思います」と、まるで第三者のように「思われた」「させてしまった」という紋切り型の言葉で自らを思考停止させている様子が伝わってきたのです。

一方、井ノ原さんは、「疑問に思うことがけっこうあったんですよ。『昔、ジャニーさんがこう言ったから、メリーさんがこう言ったから』というのをきちんと守っていたちょっと昔のタイプのスタッフがいたのも事実です。『何で? 何で? それ変えようよ』っていうのは、もう毎日言っています」「だから『忖度なくします』と言っても急になくなるものではないと思うんですよ。だからみなさんの問題でもあると、一緒に考えていく問題でもあると思いますから、ご協力いただいたほうがいいと思います」「忖度って日本にはびこっているからこれをなくすのは大変だと思います」などと語りました。

その言葉に嘘はなく、井ノ原さん自身も動いているのでしょうが、タレントとしても忙しい彼がテレビ局、出版社、新聞社、ウェブメディアなど、多くの現場をフォローすることは難しいでしょう。また、これを書いている私自身、この4メディア数十社と長年やり取りを重ねてきましたが、各スタッフからジャニーズ事務所に“忖度せざるを得ない圧力のようなもの”があることを数えきれないくらい聞いてきました。

もし「毎日言っている」のなら、あるいは「忙しくて現場のフォローに限界がある」のなら、なぜ明言して世間の人々を含めた公然の事実にしなかったのか。メディアのスタッフたちに「忖度をしたくてしている」という人はほとんどいないだけに、「今回の会見で井ノ原さんが唯一、甘さを見せたのではないか」と感じてしまったのです。

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