パナソニックの極薄カメラは何がスゴいのか 「高級カメラ+スマホ」は、未来カメラだった

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食事の帰りに立ち寄ったバーで気まぐれにシャッターを切る。それだけで絵になってくれるのはまぎれもなくCM1のおかげだが、そんな場にポケットに存在することこそが重要

とはいえ、その使い勝手は本格カメラとスマートフォンの中間よりも、少しカメラ寄りといったところ。本格的なコンパクトデジタルカメラが欲しいのであれば、素直に”カメラ”を買うべきだ。

しかし、CM1はスマートフォンにも、デジタルカメラにもなし得ない体験を与えてくれる。今後、新たなネットワークサービスが流行したとしても、そこに追従していける柔軟性を持つことも、CM1の良さだろう。

「実験的な新しいカメラ」の将来は?

ところでパナソニックは、CM1がコミュニケーションを重視した実験的な新しいカメラであることを認めている。実験的とは穏やかではないが、常に新しい機能やサービスとの連動をバックアップしていこうという意識があるのだろう。Android 5.0へのアップデート計画もその一環と言える。

もっとも、計画はそこだけに留まらない。CM1が高価になった理由は、スマートフォンとデジタルカメラ。それぞれの部分を一流にするために、それぞれに専用のハードウェアを用意して組み合わせ、まるで1台の製品のように動かしているためだ。スマートフォンとカメラの2台が、この中に入っていると行っても過言ではない。

しかしながら、パナソニックは長期的な計画の中で、将来のデジタルカメラ用半導体プラットフォームで、AndroidとLTE通信機能をサポートしていくと話している。すなわち、今は先鋭的な挑戦であるCM1の取り組みも、将来はパナソニック製のデジタルカメラ、ビデオカメラを構成する”基礎”として組み込まれていくということだ。

もちろん、その基礎を活かすかどうかは製品次第だ。しかし、将来に向けて半導体開発も含めた長期的な付加価値創造まで意識して商品ラインナップの選択や開発を行っているところに、パナソニックの懐の深さを感じる。近年、コストダウン優先で冒険をしない商品構成が当たり前の中にあって、CM1による挑戦はデジタルカメラの未来を照らし、進みべき道を朧気ながらも照らし出す灯りのように感じる。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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