はやりの「部門横断」仕事が持つ、2つの効用 「面倒な仕事が増えるだけ」か、「成長する機会」か

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当方が取材した化粧品会社では、コールセンターのメンバーを新商品企画のプロジェクトに加えたことで、それまで気づかなかった形状や個数の改善が実現できたといいます。

2つ目は社員のキャリア形成に大きく寄与できること。長く同じセクションだけで勤務していた社員に、本来であれば多様なキャリアを考える機会を提供したいと考えたときに

《エンジニア職の社員を営業職に人事異動》

するのは簡単のようで、簡単ではありません。会社にとっても社員の経験やスキルを失う可能性があります。あるいは畑違いの仕事への異動を命じられて「だったら辞めます」と言い出すかもしれません。ところが

「プロジェクトで営業部門と交流してシステム開発の課題をあぶり出してほしい」

といったことなら、やる気や経験を失うことはありません。プロジェクトを経験させることは、少ないリスクでキャリアを広げる機会の提供とも言えるのです。このように成果と育成面で、プロジェクトの活用にはメリットがあるのです。

ただ、プロジェクトのメリットを会社と社員が享受するためには、ひとつだけ条件があります。それはプロジェクトを仕切るプロジェクトリーダーを担える人材がアサインできること。この役割の詳細は別の機会で説明いたしますが、ざっくりと言えば

《チームを目標に向かって牽引できる人》

この役割を担える人が不在だと、悲惨な結末が待っています。もともと、本籍がまちまちな、バラバラな集団です。リーダーが仕切れないと、各個人が自分勝手なことをやり出す可能性が大きくなります。きっちり仕切れるリーダーがいるかどうか、それをしっかり確認してからプロジェクトを立ち上げたいものです。もしできることなら、あなたがリーダーとしてプロジェクトを牽引して、会社と自分で大きなメリットを享受してください。

いずれにしてもプロジェクト型の仕事は増えていき、狭いセクションの仕事だけに凝り固まっていることはできません。この機に、プロジェクトワークにかかわる覚悟をしておいてはいかがでしょうか。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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