メガバンクで奮闘!”均等法女子”の生き方 「前例のないこと」を積み上げ、道を作る

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これまで銀行ができなかったことをやる――。昨年4月、三井住友銀行にひとつの部署が設置された。「成長産業クラスター室」。新エネルギー、資源、水、環境ビジネス。日本が強みを持ち、今後の成長が期待される分野を発掘し、支援することが目的だ。

通常、銀行はまず企業の資金需要があって、それに応じて融資を実行する。だがこの成長産業クラスター室では、企業とともに新しいマーケットを創造する。1~3年をかけて、事業化調査から計画策定までを行い、融資部門への橋渡し役を担う。すでにある市場や事業が対象ではない。事業化前の段階から取り組む専門部隊は、メガバンクでも初の試みだ。

総勢15名の同室を率いるのが、工藤禎子。語り口はソフトだが、実は根っからの体育会系。大学時代は体育会の庭球部に所属した。「銀行にとって新しい試み。成功するかはわからない。体と頭に汗をかきながら、地道にやるだけ」。

工藤はこれまでも”前例のない”ことをやる役回りが多かった。工藤は1987年、住友銀行に入行した。いわゆる女性総合職の第1期生だ。

男社会で生き抜く、”道”を見つける

当時の銀行は完全なる男社会。制服を着て2年間支店勤務をした後、「女性に対する偏見が少なそう」と希望した国際部に配属される。シンジケートローン(複数金融機関との協調融資)を担当するが、その隣で行われていたのが、プロジェクトファイナンス(PF)だった。

PFは企業向け貸し出しとは異なり、事業そのものに融資する。事業の採算性を見越してカネをつけ、基本的に土地を担保に取らない。そのぶん、個々の事業の経済的・技術的・法的側面に踏み込んだ分析が必要で、さまざまな知識や専門性が必要になる。

今でこそ花形でもあるPFだが、当時の邦銀にとってはまだ新しい、ある種マイナーな分野だった。

「何かのプロになって、自分の居場所を作りたい」。女性が長く働くためには、ほかの会社に行っても通用するような能力を身につける必要がある。工藤にはそんな思いがあった。「これだ!」と直感した工藤は、PFに手を挙げる。

大阪のテーマパーク開発、インドネシアの発電所建設。工藤は次々と、大型の案件にかかわっていく。

その中で最も印象的だったと工藤が振り返るのが、2004~06年にかけて行われたサウジアラビアの石油精製・石油化学複合プラントの開発プロジェクトだ。

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