はやりの「部門横断」仕事が持つ、2つの効用 「面倒な仕事が増えるだけ」か、「成長する機会」か

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たとえば、取材した不動産仲介業では業界ナンバーワンを目指した Webサイトのリニューアルに関して

「プロジェクトで立ち上げ、会社の命運を託したい」

との社長の意思で、プロジェクト型で取り組んでいました。参加メンバーは営業部門とシステム部門のリーダークラスを組織横断で選んだ10人程。期間1年程度で、目指すはユーザー満足度ナンバーワンサイト。その実現のため「あるべき姿」の討議をメンバー間で繰り返します。そのプロジェクトへの参加メンバーに本音を尋ねてみると

「責任のある仕事を任せていただき、やりがいを感じる毎日」

と頼もしい回答。ほかのメンバーからも、意欲的な意見が多くて驚きました。

「自分の本業に加えて面倒な仕事を押し付けられて大変ですよ」と、ネガティブな声も出てくるかと思っていたので、非常に意外でした。普段の仕事とは違った刺激があるからなのでしょうか? そもそも、組織横断のメンバーで成果は出るのでしょうか? 通常のセクション単位で仕事をするほうがいい成果が出るのではないでしょうか?

つい、「部分最適」で考えて失敗する人たち

実際、プロジェクト型の仕事をする際に直面する課題がひとつあります。 それが、

《利害関係の調整》

です。プロジェクトメンバーには本籍があります。営業部門に所属しながらプロジェクトを「兼務」するわけです(一定の期間はプロジェクトにどっぷりとハマる場合もありますが)。本来は会社全体のために前向きに決断すべき場面で

「本籍を置く部門が損害を被るような内容なら、全社的には正しくても、反対したほうがいい」

と、“部分最適”で考える人が出てくるのです。

こうした観点を持つメンバーがいると、プロジェクトの足を引っ張ることになります。あくまで本籍の利害は棚上げして、全社的な観点で取り組んでほしいものですが……。

部門横断仕事が持つ、2つのメリット

さて、話を戻します。プロジェクト型の仕事を社内で取り組むムードは高まるばかり。それはなぜかというと、大きく2つのメリットがあるからです。

ひとつは複数セクション(部署)の視点を重ね合せることで、新しい価値が創造できる可能性が高いこと。たとえば、商品企画を開発部門だけで考えるのではなく

・営業部門
 ・顧客対応部門

からプロジェクトメンバーをアサインすることで、現場に集まるお客様の声を反映させることができます。

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