1口1万円、「小口不動産投資」で何が変わるか 新興企業トップにロングインタビュー

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岩野:貸付型のライセンスを金融庁が比較的早めに交付したといった事情によるものです。ただ、貸付型のクラウンドファンディングの内容も、当初予定していたものよりは複雑になってしまっています。たとえば、貸付先は特定してはいけない(「覆面化」)とか、貸付先は複数にしなければいけない(「複数化」)といった行政からの要請があるんですね。要は貸金の仲介ではなくファンドとしてきちんと運用しなさいという方針が定められているのです。

ただこのやり方だと、どのような貸付先に融資をしているのか、案件の内容を隠すことができるので、逆にそれを悪用することもできてしまいます。案件をすべて覆面化・複数化することが本当によいことなのかどうかといった判断は、将来的に変わっていくかもしれません。

これがエクイティ型になるとまったく逆で、案件のすべての情報を開示せよということになります。われわれはそのほうが健全だと考えていますし、マーケットが広がり出せばエクイティ型のほうが広がる余地があると思っています。投資対象物件が特定できるほうがシンプルですし、投資家にとってもわかりやすいですよね。日本の不動産市場は世界的に見ても優良かつ恵まれたマーケットなので、エクイティ型の案件が広まっていけば、5%や10%の利回りの商品はどんどん出てくると思います。

村上:そのためには、国からお許しを得る必要があるということなんですね。

岩野:はい、エクイティ型の案件を提供できるよう関係省庁との調整を続けています。エクイティ型の案件としては、たとえば第一種少額電子募集取扱業者のライセンスのもと、株式投資型のクラウドファンディングサービスを行っている他社さんはすでにありますが、そのライセンスでは1人50万円までとか年間1億円までといった少額要件が設けられています。われわれがやりたいのは、そのような少額要件のないエクイティ型で、投資家にとってお好みの案件があれば金額要件に縛られず投資できるような仕組みづくりです。

とはいえ、前例のないビジネスモデルですので、関係省庁もどうしても審査に時間がかかってしまうというのが現状なんです。

事業間のシナジー効果

村上:ロードスターキャピタルの事業間のシナジーについて教えてください。御社は以前からコーポレートファンディング事業を手がけており、そこで蓄積されたノウハウがクラウドファンディング事業を手掛けるうえでの信用につながっていると思うのですが、そうした事業間のシナジーについてはどのようにお考えですか?

岩野:シナジーは非常に大きいと思います。おカネを集めることができても、どうやって運用してよいのかわからなければリスク管理ができませんよね。われわれの強みは、私も含めたメンバー個人の中でノウハウが蓄積されており、不動産投資業におけるクレジットがあることです。つまり、集めた資金をリスクコントロールしながら運用できるということですね。だから、仮にリターンを出せなかったとしても、リスクコントロールの結果、損失を防いでいるといえます。もしリスクコントロールも十分になされず、そのままリスクが個人に集中してしまったとしたら、マーケットは広がらないとわれわれは思うんです。

村上:単純にネットでソーシャルレンディングをやりましょうというスタートアップと比べたら、財務的な面でも信用の面でも圧倒的な信頼感がありますよね。財務面のメリットも意識して、コーポレートファンディングのリソースをクラウドファンディングに回していこうとお考えですか?

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