1口1万円、「小口不動産投資」で何が変わるか 新興企業トップにロングインタビュー

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岩野:まったくなかったですね。さらに、個人からおカネを集めるビジネスは、規制上も厳しく監督される領域ですから、その点でも二の足を踏んでいました。そうしたらある時、Renrenからすぐに北京に来いと呼ばれて、そこでFundriseの幹部と話すことになりました。そこで聞いた海外のクラウドファンディングの話が非常に刺激的だったんです。われわれも、不動産投資についてはもっとダイレクトに個人からおカネを集めることができればいいと考えていました。ITによって個人でも簡単に不動産投資ができる環境を整えることができれば面白いと感じていましたし、クラウドファンディングによって、不動産投資のビジネスがさらに進化する可能性を感じていました。それだったらチャレンジしようと思い、クラウドファンディングへの挑戦を決めたんです。

村上:北京に急に呼ばれてクラウンドファンディングを始めることになったというのも、面白い経緯ですね。

岩野:チャレンジは多々ありました。たとえばソフトウエア開発です。我々はソフトウエアのプログラミングなんてやったことがなかったので、どうやって開発を進めればよいのかわからなかったんです。当初はRenrenの子会社と開発を進めていましたが、慣れていないメンバーで中国のIT企業と開発を進めるハードルが非常に高く、思ったようにソフトウエア開発ができませんでした。結局、日本の知り合いにお願いをして開発を進めることにしましたが、そのメンバーが最終的に会社に合流してくれて、今は全部インハウスでできるようになりました。

村上:2014年当時ですと、イギリスやアメリカなどではクラウドファンディング事業者やレンディング事業者が多く出ていましたね。それこそLendingClubが上場するなど、最も盛り上がっていた時期だと思います。グローバルのソーシャルレンディングのトレンドは、どの程度意識されていたのでしょうか?

岩野:海外のトレンドはそれほど気にはしませんでした。われわれには不動産というビジネスのベースがあり、あくまでそこが出発点です。そうした本業から、経験はないけれども可能性のあるクラウドファンディングへ進出し、新たな領域をどう伸ばしていくかを考えてきました。ベンチャー的な発想だと、「もっとリスクを取って、新しい事業にすべてのリソースを投じるべきなんじゃないか」という考えになるんじゃないかと思うのですが、厳格な規制の下でビジネスをしているという事情もあり、無理をして一度でも失敗したら取り返しがつかないと自覚しています。したがって、今も非常に保守的なやり方を取っています。

クラウドファンディングで短期間に売上をスケールさせるよりも、失敗したときのリスクを考えて、コーポレートファンディングでしっかりと利益を確保しつつ、慎重にクラウドファンディングに投資しているんです。

クラウドファンディングの不動産マーケットを作る

村上:御社がRenren社との縁でクラウドファンディング事業を始められたというエピソードは非常にユニークですね。

近年、国内外でソーシャルレンディング事業者に対する信用問題も生じ、ソーシャルレンディングの一時の盛り上がりもやや減速しているように感じますが、そんな中、ロードスターキャピタルのOwnersBookは着実に成長していますね。個人的には、御社の金融プロフェッショナルとしての着実なやり方に時代が追いついてきたという印象を受けますが、この点についてはどのようにお考えですか?

次ページ上場というプロセスを経て、情報を開示するしかない
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