マネーフォワードが上場後に狙っていること 話題の新興企業トップにロングインタビュー

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小林:たとえば楽天のように、プラットフォームの上にカード会社や銀行を乗せていき、自社独自の閉じた経済圏を築いていくというやり方もありますよね。そうではなく、あくまでオープンなプラットフォームとして、他社のサービスにも使ってもらうというスタイルを徹底するということですか?

:そうですね。僕らはユーザーさんにとって何がいいかが、いちばん大事だと思っています。選択肢が1つだけあるのよりも、よいものが複数あって選べたほうがいいじゃないですか。だからプラットフォーマーとしていろいろなサービスを提供するほうが僕らのやり方に合っていると思います。

キラーコンテンツは何なのか

村上:今あるPFMとクラウド会計という2つの事業をプラットフォームとしてまず広げるというのはわかりますが、提供するサービスの中でキラーコンテンツとなりうるものが出てきたとして、それがないとユーザビリティが上がらないという状況が見えたとすると、3つの事業を走らせたほうがよいとなる場合もありますよね。現時点ではそのようなサービスが出てくる可能性を想定しているのか、それともあくまで2事業にフォーカスして会社経営を続けるのか、現時点ではどちらの方向に行きそうだとお考えですか?

:いや、めちゃくちゃ鋭いご指摘ですね。今はユーザー基盤をしっかり広げていくことが第一だと考えていることは確かです。ただ、おっしゃるようにこの先、フィンテック領域でキラーコンテンツが出てくる可能性はあります。そのときにどうするのかということは、社内で議論しています。

そこで重要なのは、まずそのキラーコンテンツが何なのかということですね。たとえば個人だと送金サービスがそうなるかもしれませんが、はたしてそうした事業を僕らが手掛けて勝てるのかということですね。それと、リソースです。ベンチャーではリソースが限られている中で、すでに2事業も運営しているので、さらに事業領域を広げるためには人材がボトルネックになるだろうと考えています。

MF KESSAI株式会社という新しい会社を、完全にオフィスも分けてスタートアップとして立ち上げているんですが、30歳の冨山直道と25歳の新卒1号社員が取締役、ほかにも若いメンバー中心となって取り組んでいます。彼らがいないとできないんですよ。

だからキラーコンテンツとなる事業を担える人材があれば、そこに張るのですが、できる人間がいないなら無理ですよね。人がすべてですよ。人ってPLではコストにしか出ないですけど、BS上のいちばんの価値じゃないですか。

村上:金融機関では「人がアセット」とよく言います。実際、クラシックな金融サービスではそれは事実だと思うのですが、フィンテックの世界もそうなのかもしれませんね。

金融サービス全般に言えることは、信用のレベル感を高く保ち、本当にインテグリティがある人がやらないと、最終的にサービスとしての価値が落ちるということです。そういうインテグリティを持った人材は希少だと思いますが、そうした人材を金融サービスだからこそ重視していらっしゃるんですね。

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