マネーフォワードが上場後に狙っていること 話題の新興企業トップにロングインタビュー

拡大
縮小

:僕らみたいなセンシティブな情報をお預かりしている会社の場合、中身が見えないとお客様も不安ですよね。上場したことには、そういう意味もあります。金融機関との提携のときもそういう話がありましたし、パブリックになることでわれわれの内側を外に向けてオープンにするというのが1つの狙いでした。

それと同時に、上場する過程で管理部門や社内体制が強くなったのもよかったですね。今回、パブリックカンパニーになる過程で、会社として非常に成長して、社員みんなの意識も変わりましたし、人材を育てることもできたと思います。

グローバルへ

村上:今は国内のみでサービスを運営していらっしゃいますが、金融サービス全体で見ればグローバル化していく部分もあると思います。海外に対してもアンテナを張っているんですか?

:今はかなりグローバルのフィンテック事情を見ていますね。情報は集めていますし、どういうオポチュニティがあって、僕らがやるとしたら何ができるのかという部分を考え、次の一手を検討しています。僕らはたとえばソニーのような、日本を代表するグローバルカンパニーになりたいんです。将来的に日本のマーケットはどうしても小さくなっていくので、先を見るとグローバルを視野に入れておかないといけないと思っています。メルカリさんみたいに早い段階から自力でグローバルを目指すのか、孫正義さんみたいに買収攻勢でグローバル化を図るのか、戦い方はいろいろあるので、どれがよいかは毎日悩んでいます。答えはまだ出ていませんね。

それでも現段階では日本のマーケットがすごく伸びているので、そこで橋頭堡を築くことを第一に考えています。でもそうした橋頭堡が完成するのを待ってからでは遅いので、作りながらも東南アジアに視察に行くといったことはしています。ただ、そこも人材なんですよ。海外の事業を任せられる人材が1人でも欲しいんですよね。本当に1人で変わりますから。

朝倉:最後に、そのグローバルという視点も含めて、マネーフォワードの目指す世界観をお聞かせください。

:ミッション、ビジョン、バリュー(行動指針)に戻るんですが、バリューとしては、ユーザーフォーカス、テクノロジードリブン、フェアネスを挙げています。全体としてはおカネの課題をテクノロジーで解決したいということですね。個人で言えば、おカネが制限になって学校に行けないとか、2人目の子どもを持てないとか、そういうことが少しでもなくなればと思っています。

法人に関しては、クラウド化によって中小企業のおカネの流れを見える化し、経営情報がリアルタイムで把握できることで、経営のPDCAサイクルを速く回し、経営改善ができるような環境を整えたいと考えています。おカネと情報がつながる世界になることで、企業の生産性を飛躍的に改善できるようになるでしょう。そうして得たデータを基に、金融機関さんと一緒にクラウドファイナンスなどの新しい融資方法を提供するといった方法によって、社会全体のおカネの流れをよくしていきたいと考えています。日本でそうしたプラットフォームを築くことができたら、次はグローバルで勝負できる会社を作るということですね。

小林:日本人は真っ正面から「おカネ」を扱うことに逡巡しがちですが、おカネのプラットフォームが広がり、法人でも個人でも、あらゆるレベルで金融リテラシーが上がっていくといいですね。本日はありがとうございました!

Signifiant Style

シニフィアンスタイル(Signifiant Style)は、起業家、上場企業経営者、バンカーといったバックグラウンドを持つメンバーによって創業された、シニフィアン株式会社が運営するビジネスメディア。シニフィアンでは、IPO後もなお精力的に事業を成長させ、新たな産業の創出と発展に寄与しようとする意志を持った会社のことを、”Post-IPO Startup”(ポストIPO・スタートアップ)と定義。ポストIPO・スタートアップの活躍こそが、日本におけるスタートアップ・エコシステムのさらなる拡充と、日本経済の発展に不可欠であると考えています。シニフィアンスタイルでは、ポストIPO・スタートアップの事業活動や経営に関する知見の情報発信に取り組んでいきます。本サイトはこちら

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT