フィンテックで何が起こるか知っていますか 「口座格差」が銀行再編を引き起こす
この4月から銀行関連の規制が緩和され、金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を掛け合わせた造語である「フィンテック」の分野における企業買収や設立がやりやすくなった。さっそく、4月1日に「三井住友フィナンシャルグループが新会社を設立する」と日本経済新聞朝刊が報じた。ネット通販での決済のときに、スマートフォンで本人確認できるシステムを提供する会社だという。
今、金融を取り囲む環境は大きく変化している。ニュースを見れば、「地方銀行の再編」などの報道のほかにも、メガバンクや地方銀行の「フィンテック」の取り組みや、時価総額で2兆円を超えたと言われる仮想通貨の「ビットコイン」といった言葉が連日、飛び交っている。こうした流れの中で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は2017年中に仮想通貨「MUFGコイン」を発行すると発表した。いま、金融の世界ではいったい、何が起きているのだろうか?
「預金」を元手にした銀行の商売が崩れる
日本の金融、特に銀行を取り巻く環境は、バブル期以降、異常な状態に置かれてきた。バブルのころは、銀行の利息は普通預金で2%、定期預金なら6%以上もついた時期があり、預けているだけで資産運用ができた。その反動でバブル崩壊後から長らく続いている低金利の下では、銀行の預金口座は、多くの人にとっては資産運用の手段ではなくなっている。ほとんどのケースでは、銀行口座は単なる「決済口座」あるいは「金庫」として利用されてきたのではないだろうか。
ところが、フィンテックの登場で、銀行とわれわれの関係が変わろうとしている。「預金口座で資産を増やす」ということができない状況では、テクノロジーを活用することで「口座の使い勝手がどうよくなるか」に利用者の関心がシフトしているとも言える。
こう書くと、「銀行の預金口座の使い勝手が変わることが、そんなに重要なことなのか?」と言う人もいるかもしれないが、拙著『銀行はこれからどうなるのか』でも詳しく解説しているように、この「使い勝手」は、今後、金融業界の地図を大きく塗り替える可能性を秘めている。
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