キヤノンと吉野家の決算を分析する 「円安」や「海外失速」で、想定外に業績が悪化

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円安はプラスのはずが、営業費用が大きく脹らんだ

2013年12月期上半期の決算短信にある「所在地別セグメント情報」によると、2013年1~6月の全体の売上高1兆7835億円のうち、日本は3589億円(20.1%)、米国は5109億円(28.7%)、欧州は5428億円(30.4%)、アジア・オセアニアは3707億円(20.8%)となっています。これらの数字を見ると、キヤノンは世界中の地域から万遍なく売り上げを上げていることがわかりますね。海外の景気が業績に大きく影響するのです。

では、2013年上半期の決算内容を分析してみましょう。まずは損益計算書から収益の状況を見ていきます。キヤノンの決算書は、2つのセクションに分かれていて、上半分には2013年4~6月3カ月間の業績、下半分には同年1~6月という累計期間の業績が載っています(同社の損益計算書1ページを参照)。

初めに、アベノミクスが走り出した時期と同じ2013年1~6月の業績に注目します。「売上高」は、1兆7284億円から1兆7835億円まで550億円の増加となりました。一方、4~6月3カ月間の「売上高」を見ますと、8992億円から9668億円まで676億円増えていることがわかります。つまり、6カ月間の売上高の増加分は、すべてが4~6月の3カ月間のものであるということです。

4~6月の売上高が大幅に増えたのは、円安の影響が大きいと言えます。この半年間の円相場(対ドル)を見ますと、2012年12月以降、円安が急速に進んだことがわかります。中でも4~6月は、特に安い水準で推移していますね(右図表)。

これだけ円安が進んだにもかかわらず、同社の「売上原価」は8976億円から9202億円と226億円程度の増加に抑えられています。キヤノンは、海外でも製品を作っていますが、一眼レフのレンズなど付加価値の高いものは国内で生産しているため、円安による原価の値上がりはそれほど大きくはなかったのです。

ところが、「販売費及び一般管理費」が5061億円から5589億円まで527億円も増えてしまいました。これは、外貨建ての営業費用が円換算によって増えてしまったからです。その結果、6カ月間の「営業利益」は1752億円から1531億円まで減少しています。4~6月の3カ月間の数字では、925億円から983億円まで少し増えていますが、中国や欧州の景気が減速していることから、「しばらくは売り上げがあまり伸びないだろう」と考えて業績を下方修正したのです。

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