採択相次ぐ!「育鵬社教科書」本当の問題点 「右・左」だけでなく、グローバル視点で課題

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手前が今導入が相次ぐ育鵬社、奥が帝国書院の教科書
今年夏、主要自治体の教育委員会が相次いで、育鵬社の中学校教科書を採択した。育鵬社版の教科書は「新しい歴史教科書をつくる会」の元関係者が関わっている、という点が問題とされている。何が問題なのか。
4年前に育鵬社の教科書を採択した大田区教育委員会で委員長を務めた、弁護士の櫻井光政先生に育鵬社教科書の問題点や教育委員会での議論の流れについてお話をうかがった。
なお、大田区は今年の教科書採択では育鵬社ではなく東京書籍を採択している。東京都、横浜市、大阪市など、今夏、育鵬社を採択した自治体に住む人は、今後どんなアクションを取ることができるか、参考にしてほしい。

育鵬社版教科書の問題点は何か?

――2011年8月に大田区教育委員会は育鵬社の歴史と公民の教科書を採択しました。先生はその時、教育委員でひとりだけ、育鵬社の採択に反対して別の会社の教科書を支持しています。何が問題だと思ったのですか。

歴史教科書を選ぶ際に私が大事だと思うことがいくつかあります。まず、何が歴史を動かしたのかを客観的に観察していること。特に、誤りがなぜ起きたのかきちんと分析することが大事です。教科書は楽しい娯楽本ではありませんので、客観的な事実をきちんと述べていて、最新の研究の成果が表れていることも重要だと思っています。こうした観点から、私は育鵬社ではなく帝国書院の教科書を推したのです。

――私も小学生の子どもがいるので気になって、育鵬社の歴史教科書を地元図書館で借りて読んでみました。確かに、太平洋戦争における軍部の暴走や自国の民間人に対する無責任な行動など「誤り」に関する記述が薄い、と思いました。太平洋戦争に関する記述以外で、ふたつの教科書を比較してみて、違いなどあれば、教えていただけますか。

例えば、帝国書院には「鉄から見えるヤマト王権」という項目があります。それを読んでみますと、朝鮮半島に鉄が豊富にあり、延べ板のような形でもたらされた、その鉄を入手することができたことで、他の豪族に比べて、ヤマト王権が傑出してきた…ということが分かります。

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