語られない「コロナ嗅覚異常」本当のおそろしさ 一生回復しないことの影響はあまりに甚大だ

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ミッシェル・ミラーさんは、コロナに感染した後、キッチンに充満したガスのにおいに気がつかなかったという(写真:Joshua Bright/The New York Times)

新型コロナウイルス感染症の典型的な症状の1つに嗅覚の低下がある。これが最初の症状となる患者もいれば、唯一の症状となる患者もいる。そうした患者では、あたかもスイッチがパチンと切り替わったようにいきなり嗅覚が消え、多くの場合は味覚も失われる。

たいていの患者は通常、数週間以内に回復し、嗅覚と味覚を取り戻す。が、嗅覚と味覚が失われたままとなる患者も一部には存在する。これらの感覚がいつ戻るのか、そもそも戻るのかどうかは医師にもわからない。

新型コロナが持続的な嗅覚消失を引き起こす仕組みや治療法はほとんどわかっていない。しかし感染者は世界中で増えているため、専門家の中には、パンデミックで永遠に嗅覚や味覚を失う人が大量に出てくることを危惧する声がある。

本当の恐ろしさが理解されていない

においは味と食欲の双方と密接につながっており、嗅覚が失われるとたいていは食事の楽しみも奪われる。しかも、嗅覚が突然消失すると精神面や生活の質にも深刻な影響が出るおそれがある。

各種研究によると、嗅覚消失は社会的な孤立感や、喜びを感じられなくなる無快感症(アンヘドニア=うつなどの中心的症状の1つ)と関係している。記憶や感情はにおいと密接につながっており、嗅覚系は精神面の健康に重要な役割を果たしているが、この点はあまり認識されていないとハーバード大学医学大学院のサンディープ・ロバート・ダッタ准教授(神経生物学)は話す。

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