そのとき、検索で出てきた弁護士が伊藤真氏でした。たまたまその伊藤氏が名古屋で講演すると知った杉原さんは、藁にも縋る思いで聞きに行きました
「“やればできる。必ずできる”、伊藤氏のシンプルな言葉が、悶々としていた自分の心に驚くぐらい響きました。ああ、単に自分が行動を起こすだけなんだなと思って、すぐに司法試験を受けるために伊藤塾に申し込みました」
こうして司法試験の受験を決意した杉原さん。しかし、焼き鳥店の社長へ報告に行くと、何時間も説教されてしまいました。
「大将から『正気か?』などと言われて、めちゃくちゃ怒られたんです。ただ、半分泣きながら聞いているうちに『なんでここまで言われないといけないんだ』と逆にやる気に火が付いちゃって、『まぁ見ててください、やりますんで』と啖呵を切って受験勉強を始めました」
赤ちゃんのゲップをさせながら講義を聞いた
最初の1年は「文字を書くのも久しぶり」という状態からのスタートでした。読んでもまったく頭に入らず、覚えてもすぐ忘れる。勉強からあまりに遠ざかっていた現実に愕然とします。
「講義を聞く時間を確保するのも難しかったので、赤ちゃんのゲップをさせながら、寝かしつけながら、その隙間に講義を聞いていました。勉強方法はいろいろと試行錯誤しましたが、最終的にはぶつぶつと呟くスタイルに落ち着きました。両手が塞がっていても勉強できるからです」
焼き鳥屋には浪人の1年目から少しずつ復帰しつつ、勉強を続けます。予備試験の1段階目(マークシート)は2年目でクリア。しかし法的思考を事案に即して説明する2段階目(論文式)の壁がなかなか越えられず、毎年通過まであと100番、あと50番という惜しい位置で5年間跳ね返され続けます。
しかし、杉原さんは6年目の挑戦で、ようやく予備試験を突破します。前年の予備試験合格者の司法試験合格率は98%。その数字を見た杉原さんは、自分も合格できると思い込んでいたと言います。
「予備試験に合格して、この日々がついに終わるんだ、と思いました。ただ、そう思うようになったら、もう終わった後のことしか見えなくなってしまっていたんです。司法試験本番では、知っていることを知識として吐き出そうと意識しすぎていて、相手(問題用紙)と会話するという視点が完全に抜けていました」
失敗したことに薄々気づいたものの、「それでも受かっているはず」と自分に言い聞かせながら合格発表に臨んだ杉原さん。


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