山下氏らの説明では、2024年に専門家からセキュリティーの脆弱性を指摘されていたにもかかわらず対策が十分ではなかった点や、不正アクセスを約2カ月半もの間検知できなかった原因について触れられました。しかし、組織の意思決定や管理体制に踏み込んだ具体的な説明は一部あったものの十分になされず、企業の説明責任という観点からは課題が残ると考えられます。
一方、伊藤氏は、被害の概要や拡大防止策、顧客への補償について時系列に沿って具体的に説明しました。また、山下氏は、長期間にわたって侵入を検知できなかったことや過去の対策が不十分だったことなど、企業にとって不都合な事実も率直に認めています。さらに、経営陣による役員報酬の減額も、経営責任を引き受ける姿勢の表れと捉えられます。
第2のズレ:経営者の使命感と記者会見の目的
続く第2部に、2つ目の「ズレ」が見られます。それは、第一部で伊藤氏、山下氏、安田氏が果たそうとした企業としての説明責任を、結果として希薄化させかねないという点です。
第2部では、熊谷社長が自社の経営理念やインターネット産業に対する思いを語るとともに、AIの急速な発展やサイバー犯罪の高度化、社会全体が直面する危機について説明しました。また、自社のセキュリティー対策について、レジリエンスを重視する考え方への転換が遅れたことも認めています。
とくに注目したいのは、経営理念やインターネット産業に対する思いを語る冒頭の場面です。第1部冒頭でも見られた厳しい表情に加え、眉の内側が引き上げられる悲しみに関連する表情が生じ、時折、唇に力を込める表情も見られます。
認証局事業に参入した23年前からの思いに話が及ぶと、熊谷社長は涙ぐみながら、安心で安全なインターネットへの願いを語りました。約3時間半に及ぶ会見の中でも、感情がもっとも強く表れているように見受けられる場面です。


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