衝突したAVE2080便の運転士は、指令所からの指示によって通常の速度まで加速してしまったが、この運転士自身も異変に気付いていれば最悪の事態は防げていた可能性もある。そもそも、LZBが作動していない状況下では前述のとおり、通常走行は容認されていない。なぜ最高速度まで加速しようと試みたのかという疑問は残るが、運転士は亡くなっており、確認することはできない。
では、事故のきっかけにもなったLZBとはどのようなシステムなのだろうか。
LZBは、線路間に敷かれたケーブルからの信号を通じ、前方を走る列車との距離を連続的にチェックする車内信号装置である。1960年代にドイツで開発され、ドイツ国内の主要幹線やオーストリアなどでも採用されている。
日本で広く普及しているシステムは、閉塞区間(線路を一定の区間ごとに区切り、1区間に1本の列車しか入れないようにすることで衝突を防ぐ仕組み)が固定されているが、LZBはこの区間が前方の列車との距離に合わせて適宜移動する点が異なる。運転席には前方の列車との距離が表示され、一定の距離に近づくと自動的にブレーキがかかる仕組みになっている。
信号システム「ほぼ2日に1回」トラブル
LZBは時速300km以上の高速運転にも対応しており安全性は高いが、システムそのものの老朽化による故障の多発が問題となっている。実際に、スペインでは今年に入ってからすでに170回もシステムダウンが発生しており、ほぼ2日に1回の割合で不具合が起きている計算になる。
スペインのオスカル・プエンテ運輸大臣は、トラブルの75%はケーブルの盗難や悪天候などシステムそのものとは関係のない事象によって発生しており、この数字はヨーロッパ全体で見れば平均的なものだと会見で主張したが、今年だけで170回は明らかに多く、抜本的な対策が必要なのは明白だ。
事故の当該区間は、すでに最新の欧州標準信号であるERTMS/ETCSレベル2への更新が決定しており、日立レール(同社が買収した旧タレスが受注)が請け負っている。これらは2027年には稼働予定となっている。

