事故が起きる直前の8時30分ごろ、マドリード―セビリア間の高速新線では現場周辺の信号装置故障により、上下合わせて6本の列車が停車していた。このマドリード―セビリア間の路線は、1992年のセビリア万博開催に合わせて開業したスペイン最初の高速鉄道で、信号には「LZB」という旧式の装置を使用している。付近を走行中の列車がストップしたのは、このLZBがダウンしたことが原因だった。
無線の交信記録によると、8時36分に運輸指令所が「通常通り」の運行再開を指示したことがわかっており、今回の事故で追突したAVE2080便はその指示に従って運転を再開した。

システムダウンのまま「通常通り」運行の指示
ただ、この時点ではLZBはダウンした状態のままで、運行再開はバックアップ用として設置している在来線と同タイプの信号装置「ASFA」によって行われた。LZBは列車内の運転台に信号を表示する車内信号式だが、ASFAは地上に信号機があるタイプだ。ASFAによって運転する場合は有視界走行が条件となるため、高速新線上では最高時速を40kmに制限する決まりがある。
指令所からの「通常通り」という指示に対し、停車していた別の列車の運転士から「本当に通常通りなのか?」という確認が行われていたことも記録されている。通常通りとは、最高速度も含めて通常の走行へ戻すことを意味するが、LZBが作動しない状態では、本来なら前述のとおり時速40kmの速度制限が課せられることになっているからだ。

