一方、映画では大久保が同僚の母親を「救う」話も出てくる。ロシア人である同僚の母親は病気のため「死にたい」と何度も口にしていたという。だが、大久保はロシア語を習ってまでして彼女を支えていた。結果、母親は「生きる」という選択をしている。
「一見、林さんと矛盾するようですけど、同僚の母親は本当に死にたいわけではなくて、その裏に『さみしい』『自分に注意を向けてほしい』といった望みがありました。それを大久保はわかったのでしょう」
大久保と患者の関係は「死にたい」「では、殺します」という単純なものではなく、「その人が本心から望むケア」を考えたうえでの行動だったのではないか――。少なくともサイコパスで冷酷な医者ではないと、二村さんは感じたという。
「面会した大久保は、話し中も絶対に目を合わせず、下を向いてボソボソと喋っていました。拘置所という特殊な環境で感情的に不安定になっている部分もあるでしょうけれど、独善的な印象はなかった。気が弱く、自己肯定感が低い人だと感じました」
「お察しください」
そんな大久保と林さんがTwitterのダイレクトメッセージ(DM)を介してやり取りを始めたのは2018年10月ごろ。
「本当に入院させてもらえそうですか?」「最期を迎えることは可能ですか?」(林さんのDMより)
「お察しください」(大久保のDMより)
こんな2人のやり取りは、事件が発生する2019年11月まで続く。奇しくも6月には重い神経難病を患い、スイスで安楽死を選んだ日本人女性と、その家族の葛藤を追ったNHKスペシャル『彼女は安楽死を選んだ』が放映されている。


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