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「死にたい」と切望した女性に、生きる道はなかったのか《京都ALS嘱託殺人事件》監督が追った彼女の知られざる苦痛

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『京都ALS患者嘱託殺人事件』の二村真弘監督に話を聞きました(画像:『京都ALS患者嘱託殺人事件』製作委員会)
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二村 真弘(にむら・まさひろ)/映画監督。1978年愛知県出身。日本映画学校(現・日本映画大学)で学び、2001年よりドキュメンタリージャパンに参加、11年からフリーランスとしてテレビ番組の制作を手掛ける。和歌山毒物カレー事件の深層に迫った初映画監督作『マミー』が24年劇場公開(画像:『京都ALS患者嘱託殺人事件』製作委員会)

もう1つ、林さんがSNSで訴え続けていたのは、医療者、ヘルパーの問題だ。患者の希望を受け入れない主治医に対する不満、定着しないヘルパー、異性介助についての現状が綴られていた。

病状が進行したALS患者は、24時間365日、何らかの介助を必要とすることが多い。手足の位置やシーツのシワ1つにこだわる林さんが満足できる介助はたいへんで、介護スタッフからは「注文が多く、対応が難しい患者」と見られていたという。慢性的な人手不足もあって、最後は17の介護事業所から細切れでヘルパーが出入りしていた。

林さんは「むかついてもやめろと言えない 代わりがいないから惨めだ」と投稿している。二村さんが言う。

「友人から聞いた話では、林さんはもともと自己主張が強く、きつめの性格だったとのこと。介助者に対する要求が厳しかったのは、こうした性格によるところもあったでしょうが、それ以上に病気による過敏性や、不快な姿勢で起こる褥瘡(床ずれ)など、現実的な問題を防ぎたいというところが大きかったと思います」

その一方、異性介助については、映画に登場する林さんの父親も、見ていてかわいそうと感じるほどだったと吐露。男性のALS患者も映画の中で「心を許していない人に局部を見られることは耐えがたい苦痛」と語っている。二村さんは「異性介助によって彼女の尊厳が削られていったことは事実」と話す。

しかし、こうした介助の問題について、林さんは単に批判をするだけでなかったという。

「介助者の人手不足に関して、彼女は『賃金をもっと上げるべきだ』『自分では絶対できない仕事。こんな大変な仕事があることを皆さんに知ってもらいたい』などと投稿しています」

では、もし彼女を理解する優秀な介助者がいて、患者の気持ちに寄り添う主治医がいたら、彼女は生きる道を選んだのだろうか。

「それはわかりません。彼女はALSを発症してから一貫して『死にたい』と訴えていた。何かによって変われたかどうかは、正直わかりません」

裁判で大久保が見せた涙

二村さんは大久保に関しても、報道や裁判で知った本人像とかなり隔たりがあったと話す。そう感じるきっかけとなったのが、裁判で大久保が見せた涙だ。それは林さんに関してではなく、共犯の元医師、山本直樹被告の父親の殺害について裁判官が触れたときのことだった。

大久保に数回面会し、そのときの心境について話を聞くと「山本さんのお父さんは死にたいと思ってなかったのに、死んでしまった。その無念さを思ったら、感情がこみ上がってきた」と話したという(編集部注:山本の父親の殺害について大久保は殺人罪に問われ有罪になっている)。

大久保はSNSでは過激な言葉遣いで投稿を繰り返した。また、報酬として林さんから130万円を受け取り、わずか15分ほどで薬物を投与している。これらのことから、裁判では大久保の異常性を強調している。

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