それでも「NHK ONE」を中核にしたいのなら、やるべきことははっきりしている。「NHK ONE」でネット独自のコンテンツをどんどん出し、それを放送にも、外部のプラットフォームにも展開することだ。
ネットで生まれたものが放送に流れる。その逆流があって初めて、ネットは「従」から「主」になる。「NHK ONE」が中核と言える。
ところがNHKは、その逆をやってきた。必須業務化を前に、「びじゅチューン!」のYouTube公開を終え、「NHK政治マガジン」「NHK事件記者取材note」「海外ニュースナビ」など、積み上げてきた独自コンテンツを次々に閉じた。ネットを放送と同格に格上げしたはずが、ネット上のNHKは大きく縮んだ。
今月、「NHK ONE」に「教養」のサイトが開かれたが、中身は「歴史探偵」や「ダーウィンが来た!」など、過去番組を5〜15分に切り出したクリップだ。契約者が良質な過去番組に触れられるのはよいことだが、ネットのために作ったものではない。これでテレビと接点のない若い世代を引き寄せられるとは考えにくい。
外部のプラットフォームを活用するという方針自体は正しい。若い世代に届けるには、彼らがいる場所に出ていくしかない。だが、その最も有力な場であるYouTubeから「びじゅチューン!」を引き揚げたのは、わずか1年前のことだ。
一貫性に欠ける大方針
看板の言葉にも曲折がある。「公共放送から公共メディアへ」を打ち出したのは、上田良一会長の時代(17〜20年)だった。前田晃伸会長もその路線を継いだ。ところが23年1月に稲葉延雄会長が就任すると、24〜26年度の経営計画では表記が「公共放送(メディア)」に後退した。
このとき副会長として稲葉会長を支えていた井上樹彦氏が会長となった今、会見で「これまでNHKは『公共メディア』として」役割を担ってきたと語り、新計画では「公共メディアプラットフォーム」を掲げる。一度後退させた側が、何事もなかったかのように言葉を戻しても、説得力はない。
方針が変わったのは言葉だけではない。受信契約を取るための戸別訪問は、前田体制が法人委託の廃止を打ち出し、稲葉体制の23年9月までに全廃して「訪問によらない営業」に転換した。それが今年9月、井上体制で外部2社への委託として再開された。


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